勉強用



勉強用

1,概念、病態

2,疫学

 発症頻度

 好発年齢

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

8,分類

 臨床病期分類

 病理組織学的分類

9,診断

10,治療

 観血的治療

 非観血的治療

11,予後

を基本にまとめていく。

第一内科

慢性関節リウマチ

概念:

原因不明の多関節性関節炎を主徴とする慢性の炎症性疾患

疫学:

膠原病の中で最多、好発年齢は30-50才、1:5で女性に多い

発症機序:

自己免疫性疾患、炎症細胞が滑膜に浸潤、サイトカインが血管新生と更なる炎症細胞浸潤を引き起こし、関節が破壊される。また、サイトカインの漏出により血管炎や臓器障害が起こることもある。

病理:

血管新生、滑膜細胞の分化(マクロファージ様A型細胞、繊維芽細胞様B型細胞)、パンヌス(分化した細胞が軟骨に食い込むように形成する肉芽組織)、軟骨下骨の破壊、関節列隙の狭小化、関節の癒合

症状:

全身倦怠感、易疲労感、体重減少、微熱傾向、一時間以上続く朝のこわばり(滑膜細胞が過剰に分泌するヒアルロン酸のために滑膜組織に大量の水分が貯留)、左右対称の多発性関節炎(多くはMTP関節)、手指の尺側変位、皮下結節(リウマトイド結節)、間質性肺炎、胸膜炎、心電図異常(リウマトイド結節が心筋にできることによる)、筋力低下(関節が動かないため廃用性萎縮が起こる、同様に骨粗しょう症も)、手根管症候群(炎症が末梢神経へ波及)、脊椎圧迫神経症(頚椎の侵食)、強膜炎

検査:

血沈の亢進、CRPの上昇、α2-グロブリン増加、γ-グロブリン増加、低色素性または正色素性貧血、リウマトイド因子(+)、関節液の混濁(半透明の黄白色から白色膿性)、関節近傍の骨萎縮、パンヌスに侵された骨のびらん、関節列劇の狭小

診断:

少なくとも一時間以上持続する朝のこわばりが6週間以上、3個以上の関節の腫脹が6週間以上、手・MCP・PIPの腫脹が6週間以上、対称性関節腫脹、手・指のX線の変化、リウマトイド結節、リウマトイド因子の存在、のうち4項目

治療:

NSAIDs(COX阻害)、選択的COX-2阻害薬、DMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)、step-down bridge(早期はDMARDs+NSAIDs→落ち着いたらNSAIDsのみ)、滑膜切除、関節固定、人工関節置換術

予後:

生命予後は健常人より若干短縮

Sjogren症候群

概念:

唾液腺涙腺などの外分泌腺に多数の炎症細胞浸潤

疫学:

1:10-15で女性が多い、40才、一次性(合併なし)→目や口が乾くだけの腺型と腺外症状を伴う腺外型、二次性(合併あり)

発症機序:

自己免疫性疾患

症状:

口腔内乾燥→虫歯、耳下腺の反復性腫脹、乾燥性角結膜炎(目の異物感や疲労感)、汗をかかない、空咳、リンパ節の腫脹、管質性肺炎、遠位尿細管アシドーシス、原発性胆汁性肝硬変、橋本病、RA、Raynaud症状

検査:

γグロブリン血症、血沈亢進、RF、抗核抗体、SS-A、SS-B(特異度高)、Schirmerテスト(涙の量を調べる)、ガムテスト・サクソンテスト(唾液の量を調べる)、唾液腺造影、唾液腺シンチグラフィ(99m TcO4)、唾液腺生検

治療:

対症療法(人口涙液、人口唾液)、ステロイドは腺型以外で使用、NSAIDsは無効、免疫抑制剤は悪性リンパ腫誘発の恐れあり

予後:

生命予後良好、二次性や悪性リンパ腫併発例では不良

全身性エリテマトーデス

概念:

寛解増悪を繰り返す慢性炎症、多臓器を侵しきわめて多彩な症状を呈する

疫学:

1:10で女性に多い、20-40才

発症機序:

自己免疫性疾患、Fas抗原の機能異常による異常Th1の出現→自己抗体の産生?

症状:

全身倦怠感、微熱傾向、体重減少、易疲労、蝶形紅斑、円板状紅斑、指先の凍瘡様皮疹、脱毛、光線過敏症、口腔粘膜の無痛性潰瘍、Raynaud症状左右対称性の関節炎(骨破壊や変形はない)、無菌性骨壊死、ループス筋炎、ループス腎炎(互いに移行しあう)、痙攣発作・精神症状、軟性白斑、症膜炎(心膜炎や胸膜炎)、非感染性心内膜炎

検査:

多クローン性高γグロブリン血症、血沈の亢進、汎血球減少、抗核抗体、RF、抗リン脂質抗体、血清補体価の消耗性の低下

診断:

蝶形紅斑、円板状紅斑、光線過敏症、口腔内潰瘍、非びらん性関節炎、持続性蛋白尿または細胞性円柱、痙攣または精神症状、胸膜炎または心膜炎、いずれかの血球の減少、抗dsDNAまたは抗SmまたはLE細胞または梅毒反応生物学的偽陽性、抗核抗体のうち4項目

治療:

ステロイド全身投与、不十分な場合は免疫抑制剤

予後:

5年生存率90%以上

全身性強皮症

概念:

皮膚硬化を特徴とする原因不明の疾患

疫学:

1:7で女性に多い、35-55才、びまん型(皮膚病変が広汎で早期から内臓や血管に病変を合併)、限局型(皮膚病変が四肢末端や顔面に限定し内臓や血管の病変は長期罹患後に出現)、オーバーラップ型(他の膠原病を合併)

発症機序:

自己免疫性疾患、繊維が細胞の活性化、過剰のコラーゲン産生、皮膚・血管・内臓にコラーゲンが沈着

症状:

Raynaud症状、こわばり感、皮膚のむくみ(浮腫期)→皮膚が蝋のように(硬化期)→色素沈着・色素脱失・石灰沈着(萎縮期)、多発性関節炎(関節破壊はない)、筋力低下、筋痛、肺繊維症、舌小帯短縮、下部食道のつかえ感、強皮症腎(血管内皮が侵され繊維化、狭窄)→悪性高血圧

検査:

高γグロブリン血症、血沈の亢進、抗核抗体、抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、末節骨の骨吸収像、両側中下肺野に網状線状陰影、不整脈

治療:

D-ぺニシラミン(コラーゲンの分子間架橋を抑制)、プロスタグランジン製剤・カルシウム拮抗薬(Raynaud症状)、ACE阻害薬(強皮腎クリーゼに大して)、ステロイドは皮膚潰瘍の形成を助長し感染を誘発するため基本的に用いられない

多発性筋炎、皮膚筋炎

概念:

横紋筋をびまん性に侵す炎症性疾患

疫学:

5-10才と40-60才の二つの年齢層に多く後者は1:2で女性に多い

発症機序:

自己免疫性疾患

症状:

筋力低下(近位筋から始まる、動揺性歩行→物を持ち上げられない→・・)、ヘリオトロープ疹(特異性高)、Gottron徴候(左右伸側に対称性に落屑を伴う暗赤色の紅斑)、間質性肺炎、Raynaud症状(軽度)、悪性腫瘍の合併(10-20%にのぼる)

検査:

血沈の亢進、CRP上昇、抗ENA抗体、抗Jo-1抗体、筋症状によるもの(CK、GOT、LDH)、筋生検

診断:

皮膚症状:ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、両上下肢伸側の紅斑 筋症状:上肢または下肢近位筋の筋力低下、筋肉の自発痛または把握痛、血清中の筋原性酵素の上昇、筋電図の筋原性変化、骨破壊を伴わない関節痛または関節炎、全身性炎症所見、抗Jo-1抗体、筋生検での筋炎の病理所見 筋症状のうち4つで多発性筋炎、皮膚症状がひとつでもあれば皮膚筋炎

治療:

ステロイド第一選択(CK値の推移とともにゆっくり減量していく)、重篤な例で免疫抑制剤

予後:

5年生存率は70%前後、悪性腫瘍の合併例の予後は不良

放射線科

<検査>

1,X腺

 air bronchogram:肺胞内の浸出物により連続的に肺胞郡が埋まってゆき融合性の陰影が形成されたとき、これらの中にある気管支内には空気が残存することになる。融合性の陰影の中に空気透亮像が描出されたもの。

 Consolidation

2,CT

用語説明:

 CT値:空気の透過性を-1000、骨の透過性を+1000として白黒を2000等分して表現。水がおよそ0であり、脂肪は-100くらいになる。その他の組織は+10~+50ほどに集まっている。

 WL、WW:WLを中心としてWWの幅だけのCT値をはっきり表現しているという意味でCT画像の左端あたりに記載してある。

解剖:

 腎:造影CTでは3つのフェイズがある。造影剤注射直後は皮髄がはっきり区別してうつり、2分ほどで造影剤は髄質に移行、4分たつと尿管に流れ腎盂や腎杯がはっきりうつるようになる。

 肝:右葉左葉の境界にはカントリ線、中肝静脈がある。肝十二指腸間膜が病変の波及経路として重要で、門脈、肝動脈、総胆管を中に含む。単純CTでリング状の濃染が見られたら転移性肝癌、造影CTでHigh-Low Patternが見られたら肝細胞癌(被膜の有無で予後が変化)、中心部のLow-High Patternで限局性結節性過形成を疑う。

 大腸:CTではわかりにくい。上行、下行、直腸の下1/3は後腹膜臓器。

 脾:CT上脾が後腹膜にしっかりくっついているレベルで腹大動脈よりも前に出ていたら脾腫と考える。造影CT上血管なのか石灰化なのかを見分けるのも重要。血管の場合はCT画像間に連続性がある。

 膵:後腹膜臓器。への字形で頭部が右下、尾部が左上。CT上では脾静脈のすぐ下に見つけられるのが正常。

 胃:噴門、底、体、前庭、幽門の5つの部位がある。

 副腎:「人」の形をしており、腎より上前方腹側にある。

 十二指腸:後腹膜臓器。球、下行、水平、上行の4つの部位がある。トライツ靭帯のところから腹腔内に入ってくる。トライツ靭帯の中には下腸間膜静脈が通っている。

3,MRI

 H2Oと-CH2を画像化したもの。H2Oの信号は微小環境の変化で大きく左右されるため、T1WI、T2WI、拡散強調画像の三つが微小環境の別な因子を強調したものとして撮り分けられる。T1WIでは水が低信号、T2WIでは水が高信号。T2WIで水より高信号ならばvascularityが大きいと考えてよい(褐色細胞腫など)。

<治療>

1,放射線の効果

有効:扁平上皮(口腔、食道、肛門、膣、子宮頚部)、リンパ腫、小細胞癌、白血病、セミノーマ、大腸の腺癌

有効でない:腺癌一般、乳腺、肝臓、腎臓、すい臓、甲状腺、副腎、肺の扁平上皮癌、骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、神経節線維肉腫

効果が様々:未分化癌

2,治療方法

照射装置

リニアック:

linear accelerator、直線加速器。マイクロ波を用いて熱電子を4-20MeVまで加速する。

γナイフ

小線源療法:

組織内照射。機能面、外観から手術治療では損失が大きいとされる腫瘍に用いられることが多い。舌癌、前立腺、子宮頚癌、胆管癌など。

呼吸器科

肺腫瘍

1,原発性肺癌

リスク:

喫煙・・直接喫煙、間接喫煙

職業的暴露・・ヒ素、アスベスト、クロムなど

食習慣・・緑黄色野菜摂取不足、果物や生野菜の摂取不足、脂肪やコレステロールの過剰摂取

遺伝的要因・・発癌物質の代謝にかかわる酵素活性

呼吸器疾患の既往

大気汚染

室内空気汚染・・暖房、調理用燃料、アスベスト、ラドン

ハイリスク群:

50歳以上

喫煙指数400以上、特に現役喫煙者

癌の家族歴

肺結核の既往症、肺のう胞症や間質性肺炎などの慢性肺疾患の合併症

疫学:

日本人の年間肺癌死亡数は5万人以上で、男性は女性の2.6倍

予後:

組織型分類:

扁平上皮癌:角化と細胞間橋が診断基準。喫煙と関係大。

 高分化

 中分化

 低分化

小細胞癌:予後は最悪。早期から転移を起こす。

 燕麦細胞型

 中間細胞型

 管腔形成を伴う

 角化を伴う

腺癌:日本では肺癌として最多。胸腔への播種、リンパ節転移、血行性転移が多い。

 高分化

 中分化

 低分化

 腺管型

 乳頭型

 粘液結節型

 粘液細胞型

大細胞癌:光学的に扁平上皮、腺上皮への分化を示さない未分化な癌。

 粘液形成型

 粘液非形成型

 巨細胞型

腺扁平上皮癌

 高分化

 中分化

 低分化

カルチノイド:Kultschizky細胞由来。

 定型型

 非定型型

腺様のう胞癌

粘表皮癌

癌肉腫

その他

分類不能

治療:

小細胞癌

 全身化学療法が治療の中心。多剤併用(シスプラチン+エトポシド、シクロホスファミド+アドリアマイシン+ビンクリスチン)で行われる。放射線療法の併用で更なる予後の改善が望める。

非小細胞癌

 早期例では手術療法による根治が期待できる。ⅢB期以降では手術適応はなく、5年生存率は5-10%である。

2,転移性肺癌

分類:

血行性、リンパ行性、播種性、管内性転移

細菌性肺炎

症状:

発熱、悪寒、戦慄、湿性咳、痰、胸痛、呼吸困難

理学所見:

声音伝導増強、気管支呼吸音増強、打診で濁音、断続性ラ音

検査:

白血球数増加、血沈亢進、CRP値亢進

浸潤影、air bronchogram

原因菌:

肺炎球菌 →最多。セフェム、カルバペネムで治療。

黄色ブドウ球菌 →気管支肺炎、空洞形成。肺化膿症や膿胸の原因にもなる。MRSAは院内感染で、グリコペプチドやアミノグリコシドで治療。

インフルエンザ菌 →気管支肺炎。鼻咽頭の常在菌。第三世代セフェムで治療。

クレブシエラ →口腔常在菌。嚥下性肺炎の原因にもなる。分泌物を多く出すので太葉性肺炎になる。第三世代セフェムが有効。

緑膿菌 →院内感染。空洞形成を伴う。緑膿菌用のペニシリン、アミノグリコシド、ニューキノロンなどが有効。

嫌気性菌 →嚥下性肺炎の原因。腐敗臭を放つ。アミノグリコシドは一切無効。ペプトコッカスにはPCGを、バクテロイデスには第三世代セフェムを用いる。

レジオネラ →細胞内寄生菌。免疫不十分な患者に好発。マクロライド、リファンピシン、ニューキノロンで治療。

モラキセラ・カタラーリス →口腔内に常在。第三世代セフェム、カルバペネム、ニューキノロンなどが用いられる。

肺化膿症

症状:

肺炎と同じ

検査:

二ボー:病巣中心部に空洞、その中に膿の貯留。

原因:

黄色ブドウ球菌

クレブシエラ

緑膿菌

嫌気性菌 →腐敗臭

治療:

抗生物質が基本で、ドレナージが必要になることもある。膿瘍と気管支が交通すれば軽快する。

膿胸

概念:

胸腔内に膿性の胸水が貯留した状態。

原因:

黄色ブドウ球菌、嫌気性菌

症状:

細菌性肺炎と同じ。

検査:

胸水貯留

治療:

胸腔ドレナージ

非細菌性肺炎

マイコプラズマ肺炎

原因:

M. pneumoniae。非定型肺炎の大半を占める。飛沫感染だが、感染力は弱い。

症状:

乾性咳、発熱

検査:

白血球増加は軽度、血沈亢進、CRP亢進、IgMの増加。

すりガラス状陰影

治療:

マクロライド系とテトラサイクリン系

クラミジア肺炎

検査:

C. trachomatis →

X線読影

正常:

major fissure:下葉と中葉の境界。右肺では側面像で、左葉では上葉と下葉の境界になる。

minor fissure:正面像における右葉の上葉と中葉の境界。正面像で見える。

局所性の陰影:

肺野広い+tear drop心+横隔膜が平坦 →肺気腫

血管陰影なし →気胸

リンパ節腫大(片側) →結核、扁平上皮癌

リンパ節腫大(両側) →サルコイドーシス、悪性リンパ腫、小細胞癌

石灰化 →結核腫

spicula →扁平上皮癌

notching →腺癌

Kerley line →癌性リンパ管症:リンパや血流の鬱滞による)

びまん性の陰影:

肺の萎縮 →肺線維症

すりガラス状 →線状影 →

        網状影 →

        粒状影 →粟粒結核、肺内転移

浸潤影 →ARDS、肺水腫

air bronchogram:浸潤影で気管支の中に空気が残って見えるもの。

consolidation:融合像、浸潤影と同義語。含気腔が液体などで埋まった状態で、均一に白く写る。Air bronchogramもしばしば見られる。

シルエットサイン:病変が接しているために普段明瞭な境界が不明瞭になったとき、これをシルエットサイン陽性という。

略語

ARDS:急性呼吸促迫症候群

第一外科

原発性肝癌

肝細胞癌

1,概念

 肝細胞を発生母地とする悪性腫瘍。95%以上で肝炎ウイルスの持続的感染がみられる。正常な肝細胞が癌化することはめったにない。

2,疫学

 原発性肝癌の95%を占める。肝炎ウイルスとしてHCV、HBV感染が90%を占める。HCVは慢性肝炎により、HBVは遺伝子の組み込みにより癌を発生させるため、HCV感染による肝癌は60代がピーク、HBV感染による肝癌は40-50代がピークになる。男女比ではHCV感染で7:1、HBV感染で4:1とどちらも男性が多い。

3,分類

 Eggel分類

4,病理

 癌が成長し大きくなるにしたがって分化度は小さくなる。

 1cm以下・・高分化型。類腔、索状の構造が見られる。門脈、肝動脈両方で支配される。

 2cm以上・・中、低分化の細胞に置き換わってくる。ほとんどの場合、腫瘍を取り囲むようにして線維性の被膜ができる。肝動脈の支配が強くなっていく。

 また、肝細胞には多中心発生する傾向があり、肝内転移との鑑別も問題になる。

5,症状

 高率に肝硬変を合併するため、肝硬変の症状が前面に出てくる。肝腫大、右季肋部痛。腫瘍の腹腔内破裂による腹水、低血圧、他にも腫瘍随伴症状(低血糖、多血、高Ca、高コレステロール)を呈することもある。

6,検査

 肝機能マーカー上昇・・AST、ALT

 胆道系酵素上昇・・ALP、LAP、γ-GTP

 腫瘍マーカー上昇・・AFP、PIVKA-Ⅱ

 腹部エコー・・モザイク状の陰影

 腹部CT・・High-Low Pattern

 MRI・・腫瘍内部はT1、T2のいずれかで高信号

 肝動脈造影・・大きな癌では動脈相での濃染、AP Shunt

7,治療

 ①外科切除

  利尿薬を用いても消失しない腹水、安静によっても低下しない2.0mg以上の高ビリルビン血症がある場合は手術に耐えられないとして手術適応外。ICG試験の停滞率30%以上で適応外、20%代で1/6まで、10%代で1/3まで、10%以下で2/3まで切除可能とされる。

 ②経皮的エタノール局注療法PEIT

  3cm以下で3個以下の症例に適応。純エタノールを注射する治療法で、侵襲が少なく、繰り返し治療できる。

 ③経カテーテル肝動脈塞栓術TAE

  動脈支配のみの大きな肝細胞癌に有効。冠動脈の分枝に塞栓物質を注入。門脈本幹、一次分枝に主要塞栓がある場合は禁忌。根治性では前二者に劣るため、前二者の適応を外れたものに用いる。

8,予後

 2cm以上の肝細胞癌が多発した場合、5年生存率は20-30%。2cm以下の肝細胞癌では5年生存率は70%以上。

胆管細胞癌

1,概念

 肝内胆管の上皮細胞を発生母地とする悪性腫瘍。肝内胆管癌とも呼ばれる。肝外胆管上皮細胞から発生する悪性腫瘍は胆管癌と呼ばれ、区別され、肝癌には含まれない。

2,疫学

 男女比は1.5:1、60才以上で好発。原発性肝癌の3.3%。17.1%に慢性肝炎、9.9%に肝硬変を合併。通常は単発性。肝内胆石、原発性硬化性胆管炎、総胆管拡張症、肝吸中などの慢性刺激が原因になるとされる。HBAbとの関係は少ない。明確なものがないため、ハイリスク群の設定が困難。肝細胞癌と比較するとはるかにリンパ節転移しやすい。

3,分類

 発生部位により臨床症状、診断方法、治療法が異なるので、わが国では肝門部付近の胆管に由来する肝門型と肝内胆管の末梢から発生する末梢型に細分されている。しかし、肝内と肝外の胆管の境界が明瞭に定義されていない。統一した見解もない。

 Staging

| |T |N |M |

|Stage Ⅰ |T1 |N0 |M0 |

|Stage Ⅱ |T2 |N0 |M0 |

|Stage Ⅲ |T3 |N0 |M0 |

|Stage ⅣA |T4 |N0 |M0 |

|Stage ⅣB |T1-4 |N1 |M0 |

| |T1-4 |N0-1 |M1 |

 肉眼分類としては腫瘤形成型、胆管浸潤型、胆管内発育型の3基本型に分類された。そのうち腫瘤形成型とその優越型のみに対し、進行度分類を適用することになった。

4,病理

5,症状

 一般に不定愁訴から始まる。

 肝門型・・黄疸30.0%、全身倦怠、腹痛

 抹消型・・末期まで無症状、腹痛26.0%、全身倦怠感26.0%、食欲不振、発熱

6,検査

 胆道系酵素上昇・・ALP、LAP、γ-GTP

 直接型ビリルビン上昇

 腫瘍マーカー上昇・・CEA、CA19-9

 腹部エコー上肝臓とほぼ等エコーの境界不明瞭な八頭状の像、肝門型では腫瘍によって閉塞された抹消の胆管が拡張

 CT上境界不明瞭な低濃度域、造影CTでは血行が少ないため増強されない

7,診断

 

8,治療

 経皮的局所療法やTAEは無効で、外科的治療が唯一根治を期待できる。切除率は54.6%とHCCより高率だが、早期発見が困難であるため、多くの症例ではすでに進行した状態で発見される。

 肝移植は初回治療の選択肢のひとつだが、切除不能例に対する肝移植後の3,5年生存率は8, 0%と極めて不良である。

 外科治療:

 切除術式は一般に右葉あるいは左葉切除、時に拡大3区域切除も行われる。肝切除とともに対側の肝門部胆管切除を行ったうえ、胆道再建は残存肝の肝内胆管と空腸のRouxen-Y吻合術が施行される。肝門部で肝動脈、門脈浸潤がある場合には、合併切除、のちに血行再建を行うこともある。尾状葉の胆管は左右胆管より分岐しているために癌に浸潤されやすく、尾状葉合併切除などの拡大手術が最近積極的に行われだした。リンパ節郭清は肝十二指腸靭帯、膵頭部、腹腔動脈周囲のリンパ節を徹底的に行う必要がある。

9,予後

 早期発見して外科切除すれば予後良好。胆管細胞癌全症例における累積生存率は3,5,10年でそれぞれ42, 32.6, 17.3%とHCCに比べ予後不良である。死因としては癌死81.4%, 肝不全死12.4%。治癒的切除が可能であった場合、1,3,5,10年生存率は82.3, 56.3, 44.8, 35.4%と比較的良好。

略語など

CA19-9

:糖鎖抗原CA19-9とは、大腸癌培養細胞SW1116をマウスに免疫して作製したモノクローナル抗体MS19-9の認識する糖鎖のことである。血清の測定では大腸癌、各種の消化器癌、膵癌、胆肝癌の患者に高頻度かつ高濃度の抗原が検出される.抗原は[Gal1-3GlcNAc]の繰り返し構造(I型糖鎖)を基本骨格とするルイスA(Lea)の血液型糖鎖にシアル酸が結合したシアルルイスAで、血清中には分子量500万以上の巨大シアロムチンとして他の糖鎖とともに存在する.抗原は正常胎児および成人の唾液腺、胆管系および膵管系上皮の組織中に微量に検出される.

良性患者ではおおむね正常域にある。また、胆管炎を併発した胆石症の中に、1000U/ml近い異常高値をとる症例があったが、炎症と閉塞の解除に伴って正常値に低下した.悪性腫瘍では、腫瘍が小さくても異常高値をとることが多い。また、膵管・胆管の閉塞が解除されたとしても正常値までは回復しないことが多い。

DUPAN-2

:DUPAN-2は、Metzgarら(1982)が膵腺癌由来培養細胞を免疫原として作製したモノクローナル抗体により認識される分子量数百万の巨大糖蛋白で、シアル酸が抗原活性に関与する糖鎖抗原と考えられている。そのエピトープは、血液型関連糖鎖の一つ シアリルLc4である。血中DUPAN-2値とLewis血液型は、CA19-9の場合と裏返しの関係にあり、Le抗原陰性者でより高値を示すという。DUPAN-2は、膵癌、肝・胆道癌にはとりわけ高い陽性率を示し、これら悪性疾患の診断補助ならびに術後・治療後の経過観察に有用な指標となる。なお、DUPAN-2の健常者Cut-off値として一般に 150U/mlが用いられているが、良性疾患においてはかなりの偽陽性が認められる。癌特異性を考慮する場合には400U/mlをより高次のCut-off値として利用することが望ましい。

膵癌、肝細胞癌、胆道癌、肝内胆管癌、大腸癌、慢性膵炎、慢性肝炎、肝硬変、胆石症、消化管潰瘍で高値をとる。

SPan-1 s-pancreas-1 antigen

:SPan-1抗原は、鄭ら(1987)が培養膵癌細胞株を免疫原として作製したモノクローナル抗体により認識される腫瘍関連抗原である。そのエピトープは巨大分子ムチン様糖蛋白上にあり、抗原性がノイラミニダーゼ処理によって消失すること、熱やプロテアーゼ処理によっても保持されていることから、非還元末端にシアル酸を有する糖鎖と考えられている。いくつかの報告ではCA19-9と同じくsialosyl Leaをエピトープとする可能性が高いという。免疫組織化学的には、主に膵癌をはじめとする消化器癌に膜構成成分として本抗原が存在することが認められ、その強い分泌性から血中にも高率に出現する。SPan-1抗原の良性疾患による偽陽性率は極めて低く、さらに膵癌との鑑別に困難を伴う急性膵炎の偽陽性例も多くは軽度上昇に留まることから、より特異性の高い癌の診断、および術後・治療後の経過観察に有用な指標とされる。

膵癌、肝細胞癌、胆道癌、肝内胆管癌、大腸癌、慢性膵炎で高値をとる。

ICG

:肝機能や肝予備能を知るための色素負荷試験。肝機能が低下するほどR15(15分血中停滞率)は高値に。

TPHA

:梅毒トレポネーマ赤血球凝集反応。

小児科 Pediatrics

・成長期の分類とパターン

受精卵期:受精~2週

胎芽期:3週~8週

 細胞の分裂・分化が急速に進む。この時期の障害は奇形を招きやすい。

胎児期:9週~出生

新生児期:出生後4週間未満

乳児期:出生~1才未満

幼児期:1才~6才未満

学童期:6才~12才未満

思春期:12才~15才

・必要な知識

生理的体重減少:出生から4日ほどの間に150-300gほど体重が減少すること。出生直後、児は浮腫状態であるため。

体重増加:3-4ヶ月で2倍、1年で3倍。出生後0-3ヶ月は1日あたり25-30gずつ増加、3-6ヶ月は20-25g、6-9ヶ月は15-20g、9-12ヶ月は10-15g増加。

呼吸窮迫症候群 RDS

1,概念

 病理所見で肺胞上皮に好酸性の硝子体様物質がみられることから肺硝子膜症と呼ばれていたが、同様の所見が本症以外でも認められ、ideopathic RDSと呼ばれたが、原因が肺の未熟性を伴う肺サーファクタント不足によることが明らかになり、呼吸窮迫症候群と呼ばれるようになった。

 肺の拡張不全による多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼが主要所見。

2,疫学

3,発症機序

 Ⅱ型肺胞上皮細胞が分泌するサーファクタントが不足することにより肺の拡張不全が起こり、低酸素、換気不全を引き起こす。

4,病理

5,症状

6,理学所見

7,検査所見

 胸部単純X線上、肺野全体が無気肺となり、心陰影が不明瞭になる。

 PaO2低下、PaCO2上昇、努力呼吸と低酸素による代謝性アシドーシス

8,分類

9,診断

 一過性多呼吸、B群溶連菌などによる肺炎、総肺静脈還流異常との鑑別が必要。L/S比、SMR testによりサーファクタントの有無を証明でき、診断の助けとなる。

10,治療

 持続陽圧呼吸 CPAP

 サーファクタント補充療法

11,予後

Wilson-Mikity症候群 / 新生児慢性肺疾患

1,概念

 気管支肺異型性とWilson-Mikity症候群は区別が困難であり混在することもあるため、一括して新生児慢性肺疾患と呼ばれることもある。前者は酸素毒性、人口換気に伴う圧障害による。後者は肺の未熟性など内因性素因により起こる。

 

2,疫学

3,発症機序

4,病理

5,症状

6,理学所見

7,検査所見

8,分類

9,診断

10,治療

11,予後

一過性多呼吸 TTN

胎便吸引症候群 MAS

21 trisomy

1,概念

 特異な顔貌、多発奇形、筋緊張低下、発育・精神遅滞を特徴とする染色体異常。

2,疫学

 新生児1000人に一人。

3,発症機序

 染色体異常、47,XY,+21(93%)、転座型5%、モザイク型2%

4,病理

5,症状

 後頭部が扁平の短頭、瞼裂斜上、内眼角贅皮、低い鼻根部、小耳症、巨舌、先端不整の歯、頚部皮膚のたるみ、短頚、短い四肢・指趾、第5指短縮・内彎、腹部膨隆、腹直筋離開、臍ヘルニア、小陰茎、先天性股関節脱臼、皮膚紋理異常(指紋の尺側蹄状紋増加、軸三叉高位、猿線、第5指単一曲線、母趾球部の脛側弓状紋)、など。精神遅滞は必発、著名な発育遅滞。

 合併症も多く、心・血管奇形(50%、心内膜床欠損症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、Fallot四徴症などが多い)、消化器奇形(十二指腸狭窄症、食堂狭窄症、鎖肛)、急性白血病など。

6,理学所見

7,検査所見

8,分類

9,診断

10,治療

11,予後

新生児仮死

1,概念、病態

 広く出生時に見られる呼吸循環不全の状態を意味する。

 分娩の過程で子宮収縮に伴って、短時間ではあるが子宮胎盤間の血行が途絶える。予備能力が低下している場合、遅延分娩、過強陣痛などでは、容易に仮死に至る。

 胎児への酸素供給が途絶えたとき、一時的に呼吸が速くなり、一時性無呼吸、喘ぎ呼吸と経て最終無呼吸に至る。一時性無呼吸の際に出生した児は刺激に容易に反応し、自然呼吸が確立する。最終無呼吸時に出生した児は抹消循環が悪く、全身蒼白、単なる刺激や酸素のみでは自発呼吸は確立されない。加えて高CO2血症、呼吸性アシドーシス、代謝性アシドーシスも高度である。

2,疫学

3,発症機序

4,病理

5,症状

6,理学所見

7,検査所見

8,分類

9,診断

 Apgarスコア

 

|点数 |0 |1 |2 |

|心拍数 |ない |100以下 |100以上 |

|呼吸 |ない |弱い泣き声、不規則な浅い呼吸 |強く泣く、規則的な呼吸 |

|筋緊張 |だらんとしている |いくらか四肢を曲げる |四肢を活発に動かす |

|反射 |反応しない |顔をしかめる |泣く、咳・嘔吐反射 |

|皮膚の色 |全身蒼白または暗紫色 |体幹ピンク、四肢チアノーゼ |全身ピンク |

10,治療

 ABCDの手順を踏むこと

11,予後

大血管転位

1,概念、病態

 心房と心室は正常につながり、右室から大動脈が、左室から肺動脈が出ているものを言う。

2,疫学

 6:4で男児に多い

3,発症機序

4,病理

5,症状

 出生直後、新生時期よりのチアノーゼは各型に共通する。

 Ⅰ型では動脈管開存がない限り強いチアノーゼを呈する。大きなPDAがある場合は上肢にチアノーゼが強いdifferential cyanosisを示す。

 Ⅱ型ではVSDを通ってのシャント量が多いため、肺高血圧、うっ血性心不全症状を示す。

 Ⅲ型ではPSのため、Ⅰ型よりチアノーゼが重症である。

6,理学所見

 心雑音は半数の例では聴取しない。VSD、PS、PDAの雑音を聴取することはある。

 Ⅱ型では肝腫大などの心不全徴候を示す。

7,検査所見

 胸部X線:出生直後では典型的でないことが多い。典型的な所見としては狭い上縦隔、卵型心拡大。Ⅱ型では肺血管陰影が増強。

 心電図:右軸偏位、右室肥大が普通。Ⅱ型では軸は正常なことが多く、両室肥大をきたしやすい。また、spiked Pも示す。

 心エコー:左室から肺動脈が、右室から大動脈が出ていることを確認する。

 心カテ:診断と同時に治療も兼ねる(心房中隔切開術)。右心系、大動脈の酸素飽和度は非常に低い。

8,分類

 Ⅰ型:心室中隔欠損を伴わない

 Ⅱ型:心室中隔欠損を伴う

 Ⅲ型:心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴う

9,診断

 出生直後からチアノーゼを示す種々の心疾患以外の病態との鑑別診断が重要。いずれにしても心エコーによる早期診断が重要で、予後を左右する。

10,治療

 BAS:左房内に入れたバルーンを右房内に引き抜くことによって人工的な心房中隔を作り、出生後早期に低酸素血症の改善をはかる。

 Jatene手術:Ⅰ型、Ⅱ型が対象。大動脈と肺動脈を弁のすぐ上で付け替えし、冠動脈も走行がねじれないように付け替える。

 Rastelli手術:Ⅲ型が対象。心室中隔欠損口を利用し、内導管により肺静脈血を左室から大動脈へ、外導管により体静脈を右室から肺動脈へと結ぶ。

 Mustard手術、Senning手術:心房レベルでの血流変換術。

 内科的治療:PGE1

11,予後

 出生直後にBASなどの治療が行われなければ予後不良。

修正大血管転位 corrected TGA

1,概念、病態

 心房と心室が不一致につながり、右室から大動脈が、左室から肺動脈が出た状態。多くは心室中隔欠損、肺動脈狭窄などほかの奇形を伴う。

2,疫学

3,発症機序

4,病理

5,症状

6,理学所見

7,検査所見

8,分類

9,診断

10,治療

11,予後

水頭症

1,概念、病態

2,疫学

3,発症機序

4,病理

5,症状

6,理学所見

7,検査所見

8,分類

 水頭症の原因

 ①非交通性水頭症

先天性奇形

・Sylvius水道またはLuschkaとMagendie孔の狭窄または閉塞

・Arnold-Chiari奇形

 ・platybasia

 ・軟骨発育不全

 ・Dandy-Walker症候群

 外傷・出血の後遺症

 ・外傷

 ・出産時の外傷による出血

 腫瘍や嚢腫などの新生物

 炎症

 ・脳膿瘍

 ・髄膜炎

 ②交通性水頭症

 髄液の過剰産生

 ・脈絡叢の乳頭腫や肥大

 髄液吸収減少

 ・くも膜下腔の先天的形成不全

 ・外傷性硬膜下出血とくも膜下出血

 ・神経膠腫、後頭蓋窩腫瘍

 ・炎症(結核、トキソプラズマ、先天性梅毒、化膿性髄膜炎など)

 ・軟骨発育不全

 ・脳動静脈瘻

9,診断

10,治療

 VPシャント

11,予後

胎児水腫

1,概念、病態

 胎児に起こる著名な浮腫状態。高度な溶血(血液型不適合などによる)、ヒトパルボウイルスB19感染、染色体異常、先天性白血病、乳び胸などで起こる。

2,疫学

3,発症機序

4,病理

5,症状

6,理学所見

7,検査所見

8,分類

9,診断

10,治療

11,予後

 子宮内死亡が高率。

乳び胸

1,概念、病態

 胸管から胸膜腔内への乳びの漏出。胸部外科手術による胸管の損傷が最も多い。縦隔リンパ節や腫瘍の圧迫によっても生じる。

 両側性であることは少ない。

2,疫学

3,発症機序

4,病理

5,症状

 乳びの量にしたがって肺の容量減少と静脈の還流障害から呼吸障害を起こす。

6,理学所見

7,検査所見

 胸腔穿刺により白色ないしピンク色の脂肪、蛋白、リンパ球などを含む乳びを採取し診断を確定する。乳び内にはトリグリセリドが多い。

8,分類

9,診断

10,治療

 穿刺排液を行うが、頻繁に行うと栄養障害を起こす。低脂肪、高蛋白栄養とし、多くの場合、MCTミルク(中鎖脂肪酸ミルク)の投与を行う。

11,予後

 半数が自然治癒する。

用語

L/S 比

SMR test

VSD

PS

PDA

FFP:新鮮凍結血漿

脳出血

1,概念、病態

2,疫学

被殻出血40%(レンズ核線条体動脈)、視床出血20%(後大脳動脈系穿通枝)、橋出血10%、小脳出血10%、皮質下出血10%

3,発症機序

4,病理

5,症状

被殻出血、視床出血→内包に障害→反体側片麻痺

頭蓋内圧の亢進→進行性の意識障害、脳ヘルニア

6,理学所見

7,検査所見

8,分類

9,診断

10,治療

11,予後

脳梗塞

一過性脳虚血

前脊髄動脈症候群

髄膜炎

脳膿瘍

ウイルス性脳炎

第二内科

潰瘍性大腸炎

1,概念、病態

 Crohn病と併せて炎症性腸疾患と呼ばれる。大腸粘膜を侵し、糜爛や潰瘍を形成する原因不明の疾患。病変は直腸に始まり、連続性に上行しながら伸展していくが大腸以外の腸管を侵すことはない。

2,疫学

 発症頻度:10万人あたり0.4--0.6人程度。欧米諸国の1/10。Crohn病の4倍。

 好発年齢:20-35才。

 男女差:なし

 遺伝性

3,発症機序

 何らかの理由で腸管のリンパ球抑制機構が働かなくなり、それによって抗大腸抗体などの自己抗体が産生され、その結果として大腸炎が生じると考えられている。

4,病理

 肉眼所見:炎症は重症例でなければ通常粘膜と粘膜下層に限局する。

  活動期・・粘膜の発赤と浮腫、不規則で境界不明瞭な糜爛と潰瘍、出血性、多発炎症性ポリープ

  寛解期・・活動期の所見が消失。炎症性ポリープの色調が黄白色に。

 組織所見:

  活動期・・粘膜に炎症細胞浸潤、goblet cell減少、陰窩膿瘍crypt abscess

  寛解期・・炎症細胞は消退するが、浅くなった陰窩と萎縮した粘膜が残る。

5,症状

 主要症状:発症は通常緩徐。ただし、一部は血便、渋り腹、発熱などで急激に発症することがある。初回発症後軽快するが、再発と寛解を繰り返し、完全治癒することなく推移していくことが多い。

  下痢

  粘血便

  下腹部痛・・蠕動によって強まる。排便によって軽快。

  中毒性巨大結腸症・・全大腸型の初発時に見られることが多い。本症は炎症が強い場合に例外的に筋層まで波及して神経叢が曝され、消化管の蠕動を止めてしまう。これにより腸管は拡張し、下腹部痛や脱水、高熱をきたす。放置すると穿孔して腹膜炎、敗血症を起こすこともある。緊急手術の適応。

 合併症:アフタ性口内炎、結節性紅斑、壊死性膿皮症、関節炎、強直性脊椎炎、ぶどう膜炎など、自己免疫性の機所が疑われるものを合併する。

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査:血沈亢進、CRP値の上昇、白血球数と血小板の増加。消耗性に小球性低色素性貧血、低蛋白血症。

 内視鏡検査:病理所見参照。

 注腸造影検査:前処置が症状を悪化させることが多く、近年好まれなくなってきている。

  活動期・・粘膜のえぐれにバリウムが貯留し、数mmの斑点、鋸歯状陰影(大きなニッシェ)。再発寛解を繰り返した例では炎症性ポリープ、ハウストラが消失したlead pipe状像。

  寛解期・・粘膜のえぐれがすくなくなる。

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類:

  直腸型・・炎症が直腸に限局。全体の2割。

  左側大腸型・・直腸から横行結腸左側に及ぶ。全体の4割。

  全大腸型・・直腸から横行結腸右側にまで及ぶ。全体の3割。

  区域性大腸型

 重症度分類

  1,下痢、便回数が1日6回以上

  2,肉眼的血便

  3,発熱37.5℃以上

  4,脈拍が90回/分以上

  5,Hb≦10g/dl

  6,血沈BSR≧30mm/h

  1,2+3-6のうち2つ以上→重症

1-6のうちひとつも該当しない→軽症

重症でも軽症でもない→中等症 

9,診断

 感染性腸炎、放射線照射性腸炎、薬剤性腸炎、虚血性腸炎、Crohn病を除外して診断。 

10,治療

 観血的治療:急激に全身状態が悪化した症例、大出血をきたした症例、中毒性巨大結腸症や腸管穿孔をきたした症例、癌化の見られる症例に絶対適応。頻回再発例、ステロイドの副作用によって治療継続困難な例は相対適応。

  緊急時・・結腸全摘、回腸ろうを作る。直腸は残す。

  待機的手術・・結腸全摘+回腸直腸吻合術、大腸亜全摘+回腸嚢肛門管吻合術

  

 非観血的治療:

  一般療法・・ストレスを避ける。中等度以上では原則入院、安静。重症では絶食、中心静脈栄養。

  薬剤治療

   サリチル酸誘導体/

    サラゾピリン(サラゾスルファピリジン)・・5-アミノサリチル酸(薬効成分)とサルファピリジンの合剤。発熱、発疹、悪心、食欲不振などの副作用がある。

    ペンタサ・・5-ASAのみをセルロースでくるんだもの。

   ステロイド/

    重症例では第一選択。高用量から開始しなければならない。

   免疫抑制剤/まだ評価は定まっていない。

    アザチオプリン

    シクロスポリン

  白血球除去療法

   現在LCAPのみ保険適応である。

   遠心分離法・・比重により分離。

   GCAP・・ビーズによる吸着。顆粒球、単球の除去。

   LCAP・・フィルターによる吸着。顆粒球、単球、リンパ球の除去。血便、腹痛、潰瘍の改善。70%で効果があると報告されている。体外循環で見られる、吐き気、発熱、腹部圧迫、頭痛などの副作用がある。

   

11,予後

 癌化:長期経過中に癌化することが多い。発症した大腸癌には多発傾向が多く、肉眼的には3,4型が多く、組織学的には低分化腺癌が多い。

  10年未満・・5%

  20年未満・・20%

  30年未満・・30%

※Crohn病との病理所見の差 

| |Crohn病(小腸) |Crohn病(大腸) |潰瘍性大腸炎 |

|腸管病変 |回腸±大腸 |小腸±大腸 |大腸のみ |

|分布 |飛石状 |飛石状 |びまん性 |

|狭窄 |早期 |多様 |早期・後期 |

|腸管壁外観 |肥厚 |多様 |ひ薄 |

|拡張 |なし |あり |あり |

|炎症性ポリープ |少数 |多数 |多数 |

|潰瘍 |深い、線状 |深い、線状 |表層性 |

|リンパ球性反応 |高度 |高度 |軽度 |

|線維化 |高度 |中等度 |軽度 |

|しょう膜炎 |高度 |多様 |軽度 |

|肉芽腫 |あり |あり |なし |

|ろう孔 |あり |あり |なし |

|脂肪・ビタミン吸収不良 |あり |あり |なし |

|悪性転化 |あり |あり |あり |

|外科予後 |不良 |やや良 |良 |

大腸癌

1,概念、病態

2,疫学

 発症頻度

 好発年齢

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

8,分類

 臨床病期分類:

  Dukes分類

   A・・癌細胞が大腸壁に限局

   B・・癌細胞が大腸壁を貫いて浸潤するが、リンパ節転移はない

   C・・リンパ節転移あり

 病理学的分類:胃癌同様、癌細胞の浸潤が固有筋層まで至ったら進行癌、粘膜下層までなら早期癌。

  早期癌

   Ⅰ型・・隆起型

   Ⅱa型・・表面隆起型

   Ⅱb型・・表面平坦型

   Ⅱc型・・表面陥凹型

   (Ⅲ型・・陥凹型は進行癌に分類。)

  進行癌

   1型・・隆起型

   2型・・限局潰瘍型

   3型・・浸潤潰瘍型

   4型・・びまん浸潤型

9,診断

10,治療

 観血的治療

 非観血的治療

11,予後

耳鼻咽喉科

慢性中耳炎

1,概念、病態

 持続する鼓膜穿孔、耳漏、難聴を三主徴ととする、炎症性破壊性の中耳病変。

 成人の慢性中耳炎では耳漏が泣く難聴も軽度ならば経過観察のみでもよい場合が多いが、小児では感染の機会も多く、長期感染を生じないことはまれである。小児慢性中耳炎は原則的に耳手術の適応がある。

 一般には単純性慢性化膿性中耳炎、中耳真珠腫、癒着性中耳炎、鼓室硬化症などが慢性中耳炎の代表疾患とされる。

2,疫学

 発症頻度

 好発年齢

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

 急性中耳炎に続発する。小児の慢性中耳炎の多くは乳幼児期の急性中耳炎の反復により鼓膜緊張部に生じた鼓膜穿孔が残存し、慢性的な感染となって発生する。慢性化の原因としては以下がある。

 原因菌:Pseudomonas、Proteusinconstans、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermisなど。

 局所性要因:急性中耳炎の治療が不完全、乳突蜂巣発育不全、胎生期幼弱組織残留、耳管機能不全、口蓋裂、アデノイド、扁桃炎、鼻炎、副鼻腔炎

 全身的要因:繰り返す上気道感染、全身の抵抗性減弱、糖尿病

 最近では鼓室チューブ留置術後の鼓膜穿孔残存例も多く、この場合は乾燥性の穿孔となる。

4,病理

 肉眼所見:

  単純性慢性化膿性中耳炎にはLillieの分類がある。

   Ⅰ型:耳漏はほとんどない。鼓膜穿孔は耳管口に近いところにある。中耳腔の破壊病変は少ない。

   Ⅱ型:鼓膜緊張部穿孔は大。中耳腔に臭いのある分泌物が存在する。耳小骨は一部侵されている。

   Ⅲ型:Ⅰ、Ⅱ型の病変も合併する。耳漏が悪臭を発する。鼓膜穿孔はShrapnell膜や後部辺縁に存在する。真珠腫が存在する。

   Ⅳ型:大部分に真珠腫が存在。内耳、硬膜その他合併症が発症。手術の絶対適応。

 組織所見

  単純性慢性化膿性中耳炎:粘膜浮腫、炎症細胞浸潤、結合組織の増殖、耳小骨には種々の程度のカリエス。

  鼓室硬化症:結合組織の退行性変化に伴う石灰沈着、硝子様変性。鼓膜が鼓室壁に癒着した場合は癒着性中耳炎といわれる。

  コレステリン肉芽腫:肉芽組織に多量のコレステリン結晶と巨細胞、肉眼的に黒褐色を呈する。

  真珠腫:一次型と二次型がある。乳幼児期の中耳カタル後、Shrapnell膜に深い陥凹が起こり、そこに進入した上皮が次第に蓄積・増大して起こるのが一次型である。二次型には二つの説があるが、一説は外耳道の重層扁平上皮が鼓膜欠損部から中耳腔に侵入したものから生じ、もう一説では、中耳腔内の円柱上皮が慢性炎症刺激により重層扁平上皮化成を起こすというものである。いずれも真珠腫はたまねぎのような層状集積を形成し、コレステリンを含有している。

5,症状

 主要症状とその性状:

  一般には

・鼓膜緊張部の穿孔:単純性慢性化膿性中耳炎では緊張部、真珠腫の場合には弛緩部や辺縁に見られる。

・少量で粘液膿性の耳漏:真珠腫、混合感染例、骨破壊の多い例では強い悪臭。

・軽度から中等度の伝音難聴

  がある。

  顔面神経管が真珠腫に侵された場合は顔面神経麻痺、鼓索神経が侵された場合は舌前2/3の味覚障害を起こす。

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見:単純耳X線、CTで側頭骨乳突蜂巣の発育および含気化、骨破壊の有無、耳小骨や内耳の形態を評価。小児ではアデノイド肥大や慢性副鼻腔炎の合併例が多く、慢性中耳炎の増悪因子や術後感染の原因になりうるため、X線撮影によりチェックし、必要ならアデノイド切除、副鼻腔炎の保存的治療を行う。

 オージオグラム:早期は伝音声の低音障害型、進行すると平坦に、さらに進行すると漢音青南町も合併するため高音障害型になる。

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

 鼓膜の詳細な観察には双眼処置用顕微鏡やファイバー鼓膜鏡を用いる。穿孔の大きさは大穿孔から小穿孔まで様々である。

10,治療

 観血的治療

  術前治療として耳漏の吸引・除去、耳漏培養の結果を基にした耳浴による局所炎症の沈静化がある。これにより術中の出血も少なくなり、手技も容易となる。術後創傷治癒も早くなり、術後成績も向上する。しかし、抗生剤による内耳障害には注意しなければならない。

  鼓室形成術Ⅰ~Ⅴ型、interposition法、columella法

   Ⅰ:鼓膜穿孔のみの修復。鼓膜形成術ともいわれる。耳後石灰による鼓膜形成術にはunder-lay法とover-lay法がある。挿入する金幕が鼓膜固有層と表皮の間にはさまれるように入るのがover-lay法、鼓膜全層の内側から裏打ちするように入るのがunder-lay法である。小中穿孔で残存鼓膜が厚ければover-lay法が、大穿孔や残存鼓膜が薄ければunder-lay法が行われることが多い。

   Ⅱ:新鼓膜をキヌタ骨に接着して再建。新鼓膜には自家側頭筋膜が最も用いられる。

   Ⅲ:新鼓膜はアブミ骨頭に接着して再建。

   Ⅳ:新鼓膜は下鼓室のみに蝸牛窓を閉鎖するように形成。

   Ⅴ:水平半規管に開窓。

   Interposition法:ツチ、アブミ間に人工キヌタ骨をはめ込む。もとはⅢの適応。

   Columella法:新鼓膜とアブミ骨(底)の間に人工耳小骨を置く。元はⅢ~Ⅳの適応。

   適応について

    パッチテスト:改善あればⅠ型

    ウィンドウプロテクションテスト:改善あればアブミ骨の可動性良好な連鎖離断例。Ⅱ~Ⅳ型。改善なければ連鎖の固着。Ⅴ型。

 非観血的治療

  顕微鏡下の分泌物吸引、鼓室洗浄、点耳、耳浴、耳管への処置、急性増悪時のみ抗生剤。

  

11,予後

 迷路炎:正円孔の薄い膜が炎症により破壊され、内耳に炎症が波及する。

 グラデニーゴ症候群:錐体先端部に炎症が波及して起こる。三叉神経痛、外転神経麻痺、中耳炎の存在を言う。

 顔面神経麻痺:真珠腫による顔面神経管の破壊によって生じることが多い。

 硬膜下膿瘍:骨破壊、硬膜破壊により直接進展するか、血行性に発症する。

 その他、髄膜炎、脳膿瘍などが挙げられる。

 術後合併症としては再感染がもっとも留意される。再び穿孔が生じることがあり、5歳以下では特に注意を要する。

心臓外科

大動脈弁狭窄症 AS

1,概念、病態

 弁性狭窄:60-80%

 弁上部狭窄、弁下部狭窄:小児

 弁性狭窄  

  原因としては三つ挙げられる。リウマチ熱の後遺症。近年は減少傾向。大動脈弁閉鎖不全を伴うことが多く、僧帽弁疾患合併例もある。内膜の炎症により線維化をきたし、弁尖部の肥厚、交連部の癒合、石灰化が認められる。加齢性弁硬化。高齢者に多く、磨耗、長期間の高血圧などが原因。弁尖部の肥厚、石灰化が認められるが、交連部の癒合はない。先天性二尖弁。弁口通過時に乱流が生じ、これが長期に及ぶことによる。交連部の癒合はない。その他、感染性心内膜炎、大動脈炎、梅毒、外傷など。

  弁口面積が減少することで(1.5cm2以下が中等度障害、0.5以下が高度障害)左室圧が上昇、代償性に求心性の肥大が起こる(狭窄部位のため、大動脈圧は低下したまま)。左室の拡張期圧の上昇が起こり、肺うっ血、左心不全となる。また、心拍出量が低下しているため、冠動脈血流量の低下、狭心痛が起こる。脳血流も低下、失神する。

2,疫学

 発症頻度

 好発年齢

 男女差 4:1

 遺伝性

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状

  長期にわたる無症状、易疲労感、息切れ、動悸

  失神、狭心痛、左心不全

  労作時呼吸困難→夜間発作性呼吸困難、起坐呼吸(肺うっ血)

 合併症

6,理学所見

 血圧:収縮期血圧の低下、脈圧が減少

 脈拍:遅脈、小脈

 触診:心尖拍動が強い、収縮期のthrill(第二肋間胸骨右縁)

 聴診:駆出音(雑音に先立つ、弁口通過時の心音)、駆出性雑音(狭窄による乱流、第二肋間胸骨右縁から頚部にかけて)、Ⅱ音の奇異性分裂(ⅡAが遅れる、重症化するほど遅くなる)、大動脈駆出音、Ⅳ音

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

  胸部X線:心肥大はない、左第4弓が丸みを帯び突出、狭窄部位より先にある上行大動脈の拡張、右第1弓の突出、心不全がなければCPRはそれほど大きくならない。

  心電図:V5-6でstrain pattern(ST下降、陰性T波)が出現し手術適応の目安になる。石灰化の進行により房室ブロックも生じる。左室肥大が強くなると心室性期外収縮や心室性頻拍が生じたり、左房負荷による心房細動が見らることがある。

  心エコー:断層心エコーで左室肥大、大動脈弁肥厚・石灰化、収縮期の開放制限、大動脈の拡大、連続ドップラー法で収縮期血流速度の増加や圧較差

  心カテーテル:左室大動脈の圧較差、大動脈弁輪径測定。収縮期圧較差はドップラー法より正確。

 心機能:心拍出量、駆出率(EF)、左室拡張末期径(LVDs)、左室収縮末期径(LVDd)、左室収縮末期容積係数(LVESVI)、一回拍出量(SV)、平均左室円周短縮速度(Vcf)、左室壁厚などから評価。特にEFは左心室の後負荷と逆相関し、左室機能の重要な指標となる。

 大動脈弁:大動脈弁口面積(AVA)、圧較差、血流速度、石灰化の程度から評価。ドブタミン負荷心エコーも有用。

 ASの重症度はAVA>1.5cm2で軽度、AVA<1.0cm2で高度。血流速度<3.0m/sで軽度、>4.0m/sで高度と考えてよい。

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

10,治療

 観血的治療

  ASは臨床症状の出現によって手術適応となる。症状のある高度狭窄例(弁口面積<1.0cm2、0.6cm2/m2(体表面積))、左室機能障害を示している例、無症状であっても大動脈根部に狭窄後拡張のある例は、一般に手術適応となる。大動脈弁の圧較差>50mmHg、AVA>1.0cm2を示す高度狭窄例は休止することがあるので、左心機能にかかわらず手術適応がある。高度のASがあり、重労働を避けがたい環境、妊娠希望、内科治療に支障をきたすなどの場合には手術適応となることがある。また、高度の心不全を伴った高齢者、術後リハビリテーションが困難と考えられる高度の脳神経障害・精神障害の合併、重度の慢性閉塞性呼吸機能障害または重症の多発性動脈硬化疾患の合併がある例では適応決定を慎重に行う。

  大動脈弁置換術:重度、まだは症状を有する大動脈弁狭窄症、または症状がなくても左室機能低下が明らかな場合は、大動脈弁置換術の適応。

  経皮的大動脈弁形成術:融合した石灰化弁をバルーンにより一時的に開けることはできるが、再狭窄が多い。状態が悪くて手術が受けられない患者の、手術までのつなぎとして有効である。

 非観血的治療

  軽度、無症候性の大動脈弁狭窄症の20%は約20年かけて重度へ進行するといわれている。慎重な経過観察、抗生物質による感染性心内膜炎の予防を行えるが、血管拡張薬、利尿薬、ニトログリセリンなど、血圧が低下する薬物は用いない。

11,予後

 典型症状が出た後の予後は極めて悪い。平均余命は狭心痛から5年、失神から3年、左心不全から2年、心房細動から半年。

 重度の大動脈弁狭窄症で手術をしなかった場合の1年生存率は57%、大動脈弁置換術施行後10年生存率は75%と良好だが、経皮的弁形成術では半年以内に再狭窄を起こす確立が50%である。

大動脈弁置換術の手術適応に関して AVR

ASに対するAVRの生存率は5年間で75-80%、10年間で56%であるが、手術しなければ50%未満。80歳以上の高齢者に対しての手術死亡は4-10%だが、5年生存率は60%ほどもあり、症状の改善も良好。左室機能予備能のない患者は予後不良だが、内科治療よりもAVRの方が長期予後が良好である。

CAD合併例では、中等度までのASではCABGのみ行い、ASが中等度であっても60-65歳の患者には石灰化ASの進行が速いので、AVRとCABGを同時に行ってもよいとされている。重症のCAD、ASの患者には同時手術を行う。

循環器内科

心不全

急性心不全

1,概念、病態

2,疫学

 発症頻度

 好発年齢

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

 Forrester分類

  心係数(l/min/m2)、肺動脈楔入圧・中心静脈圧(mmHg)により分類。

  Ⅰ:>2.2l/min/m2、<18mmHg。正常。

  Ⅱ:>2.2l/min/m2、>18mmHg。肺動脈楔入圧上昇し、肺水腫。血管拡張薬、利尿薬。

  Ⅲ:<2.2l/min/m2、<18mmHg。静脈系で代償できなくなるor脱水状態が加わる。輸液+強心剤。

  Ⅳ:<2.2l/min/m2、>18mmHg。前負荷大+拍出量が保てない。強心剤+血管拡張薬。

9,診断

10,治療

 観血的治療

 非観血的治療

11,予後

慢性心不全

1,概念、病態

 心筋細胞に大きなストレスが加わると心筋細胞は肥大するが、その過程で予備能を失う方向に働くといわれる。更なる過剰なストレスにより心筋細胞は縦に並び、内腔を拡大させる。Laplaceの法則により心筋あたりのストレスはかえって増大し、悪循環を形成する。加えてカテコラミンなどの神経体液性因子が活発に分泌され、心臓への負担をさらに強めることになる。

 慢性心不全では、心機能は不十分だが血行動態は代償機能を果たしている。薬剤によるコントロールが必須の状態である。

2,疫学

 高血圧、虚血性心疾患の合併8割を閉めるといわれる。

 発症頻度:心不全が1000人に2-3人とされている。

 好発年齢:年齢とともに罹患数は増加する。

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

 虚血性心疾患、弁膜疾患、高血圧精神疾患、心筋疾患が心不全の原因となるが、慢性心不全は高血圧、冠動脈硬化によるものが大多数を占める。

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状:左心不全(全身倦怠感、夜間多尿、呼吸困難、労作時息切れ、動悸、夜間発作性呼吸困難、咳、痰、起坐呼吸)、右心不全(浮腫、体重増加、食欲不振、悪心)

 合併症

6,理学所見

 一般状態:チアノーゼ、収縮期圧の低下と頻脈、静脈怒張

 聴診:Ⅲ音、Ⅱ音肺動脈成分の亢進、僧帽弁閉鎖不全による収縮期雑音

7,検査所見

 血液検査

  NA、BNP、ANPが上昇。うっ血肝によりAST、ALTの上昇。

 画像所見

  胸部単純X線:心陰影の形状、肺うっ血についての情報を得る。

  心臓エコー:各心室のサイズ、EF、心拍出量などを算出できる。

  右心カテーテル:右房圧上昇、肺動脈楔入圧上昇、心拍出量低下

8,分類

 NYHA

  Ⅰ:心疾患はあるが症状は無く、通常の日常生活は制限されない。

  Ⅱ:心疾患患者で、日常生活が軽度から中等度制限される。安静時には無症状、日常の労作時に疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛。

  Ⅲ:心疾患患者で、日常生活が高度に制限される。安静時は無症状、日常以下の労作時でも症状があらわれる。

  Ⅳ:心疾患患者で、非常に軽度な活動も制限される。安静時に症状があらわれることもある。

 身体能力質問表 Specific Activity Scale

  NYHAよりも細かい定量性に優れる。

9,診断

10,治療

 観血的治療

  心臓移植:適応は、日本循環器学会の心臓レシピエント適応基準に順ずる。従来の治療法では究明・延命の期待ができない疾患などが該当する。

 非観血的治療

  薬物治療

   利尿薬:心臓の前負荷を軽減させることを目的とする。慢性心不全では、大量投与による脱水、心拍出量の減少がありうるため、作用の弱い利尿薬から使用をはじめる。ループ系利尿薬、サイアザイド系利尿薬は低K血症をきたし、ジギタリスの副作用を出やすくするため、ジギタリスではなくACE阻害薬との併用が好ましい。

   ジギタリス:カテコラミン、PDE阻害薬のほうが作用は強力だが、突然死が多い。ジギタリスは余命を延長も短縮もさせないが、QOLを改善させると報告されている。

   ACE阻害薬:末梢動静脈の収縮を抑制することにより、前負荷、後負荷を軽減する。また、リモデリングを抑制する効果もある。

   β遮断薬:心筋の収縮力を高めるβ1刺激を遮断することにより、投与した直後は循環動態が悪化するが、長期的には予後を改善できる。

  非薬物治療

   食事療法:塩分摂取制限。前負荷を軽減。

   安静+運動療法:合わせて深部静脈血栓、易疲労感等を改善。

   両室ペーシング CRT:慢性心不全患者のQRS幅拡大、重傷例での心室内伝導障害により生じる左室同期不全、それに伴う非効率な収縮様式を是正し、エネルギー効率を改善する。MYRACLE試験はNYHA Ⅲ/Ⅳ度、LVEF 35%以下、QRS 130msec以上の重症心不全患者453例に対しペーシング、非ペーシング群に無作為に割付し評価したもので、ペーシング群では6分間歩行距離40m延長、68%の例でNYHA分類1度以上の改善を認め、また死亡と心不全の増悪による入院の危険を40%減少させた。

  植え込み型除細動器 ICD:NYHA Ⅱ、Ⅲ度では死因の50-60%が突然死であり、その原因(持続性心室頻拍、心室細動)を除頻拍・除細動する。無作為試験で、抗不整脈薬であるアミオダロンよりも総死亡数を減少させたと報告されている。

11,予後

循環器内科略語

|英単語 |略語 |和訳 |

|abdominal aortic aneurysm |AAA |腹部大動脈瘤 |

|acceleration time |AT |加速時間 |

|acquired immunodeficiency syndrome |AIDS |後天性免疫不全症候群 |

|acute bacterial endocarditis |ABE |急性細菌性心内膜炎 |

|acute myocardial infarction |AMI |急性心筋梗塞 |

|acute renal failure |ARF |急性腎不全 |

|acute respiratory disease |ARD |急性呼吸器疾患 |

|acute rheumatic fever |ARF |急性リウマチ熱 |

|adult respiratory distress syndrome |ARDS |成人呼吸窮迫症候群 |

|AIDS related complex |ARC |エイズ関連症候群 |

|akinesis | |無運動 |

|amyotrophic lateral sclerosis |ALS |筋萎縮性側索硬化症 |

|angina pectoris |AP |狭心症 |

|annulo aortic ectasia |AAE |大動脈弁輪拡張症 |

|anterior axillary line |AAL |前腋窩線 |

|anterior mitral leaflet |AML |僧帽弁前尖 |

|anterior papillary muscle |APM |前乳頭筋 |

|aorta |Ao |大動脈 |

|aortic arch syndrome |AAS |大動脈弓症候群 |

|aortic atresia |AA |大動脈弁閉鎖 |

|aortic insufficiency |AI |大動脈弁閉鎖不全症 |

|aortic regurgitation |AR |大動脈弁逆流(閉鎖不全) |

|aortic root diameter |ARDs |外科的大動脈弁輪径 |

|aortic stenoinsufficiency |ASI |大動脈狭窄閉鎖不全症 |

|aortic stenosis |AS |大動脈弁狭窄 |

|aortic stenosis & aortic regurgitation |ASR |大動脈弁狭窄+大動脈弁逆流 |

|aortic valve area |AVA |大動脈弁弁口面積 |

|aortic valve plasty |AVP |大動脈弁形成術 |

|aortic valve replacement |AVR |大動脈弁置換 |

|apex |APEX |心尖部 |

|apical hypertrophy |AH |心尖部肥大症 |

|arrhythmogenic right ventricular dysplasia |ARVD |不整脈源性右室異形成症 |

|arterio sclerosis obliterans |ASO |閉塞性動脈硬化症 |

|arteriosclerotic heart disease |AHD |動脈硬化性心疾患 |

|ascending aorta |AAo |上行大動脈 |

|asthmatic bronchitis |AB |喘息性気管支炎 |

|asymmetrical septal hypertrophy |ASH |非対称性心室中隔肥大症 |

|asynergy | |壁運動異常 |

|atrial appendage |AA |心耳 |

|atrial fibrillation |Af |心房細動 |

|atrial flutter |aF |心房粗動 |

|atrial septal defect |ASD |心房中隔欠損症 |

|benign prostatic hupertrophy |BPH |良性前立腺肥大症 |

|bladder tumor |BT |膀胱腫瘍 |

|blood pressure |BP |血圧 |

|body surface area |BSA |体表面積 |

|body weight |BW |体重 |

|cardiac output |CO |心拍出量 |

|cardiac tamponade | |心タンポナーデ |

|cardio-thoracic ratio |CTR |心胸郭比 |

|cardioangiography |CAG |心血管撮影 |

|cardiovascular disease |CVD |心臓血管病 |

|carpal tunnel syndrome |CTS |手根管症候群 |

|catheterization |Cath |カテーテル法 |

|central venous pressure |CVP |中心静脈圧 |

|cerebral vascular accident |CVA |脳血管障害 |

|chamber | |腔 |

|chordae | |腱索 |

|chronic bronchitis |CB |慢性気管支炎 |

|chronic obstructive lung disease |COLD |慢性閉塞性肺疾患 |

|chronic obstructive pulmonary disease |COPD |慢性閉塞性肺疾患 |

|circumflex artery |Cx |回旋枝 |

|coactation of the aorta |CoA |大動脈縮窄症 |

|coaptation | |接合 |

|collapse | |虚脱 |

|collateral circulation | |側副循環 |

|common carotid artery |CCA |総頸動脈 |

|complete atrioventricular block |CAVB |完全房室ブロック |

|complete right bundle branch block |CRBBB |完全右脚ブロック |

|computed tomography |CT |コンピュータ断層撮影法 |

|congenital heart disease |CHD |先天性心疾患 |

|congenital muscular dystrophy |CMD |先天性筋ジストロフィ症 |

|congestive cardiomyopathy |CCM |うっ血型心筋症 |

|congestive heart failure |CHF |うっ血性心不全 |

|constrictive pericarditis |CP |収縮性心膜炎 |

|coronary angiography |CAG |冠動脈造影法 |

|coronary aortic bypass graft |CABG |冠動脈バイパス術 |

|coronary arteriovenous fistula |CAVF |冠動静脈瘻 |

|coronary artery bypass |CAB |冠動脈バイパス術 |

|coronary artery disease |CAD |冠動脈疾患 |

|coronary artriovenous fistula |CAVF |冠動静脈瘻 |

|coronary flow |CF |冠動脈血流 |

|coronary sinus |CS |冠静脈洞 |

|cytomegalovirus |CMV |サイトメガロウィルス |

|date of admission |DOA |入院日 |

|deceleration time |DT |減速時間 |

|deep vein thrombosis |DVT |深部静脈血栓症 |

|defibrillation |DF |除細動 |

|depression |D |低下、うつ病 |

|dermatomyositis |DM |皮膚筋炎 |

|descending Aorta | |下行大動脈 |

|dextro |dex |右の |

|diabetes mellitus |DM |糖尿病 |

|diabetic retinopathy |DR |糖尿病性網膜症 |

|diagnosis |Dx |診断 |

|diastolic blood pressure |DBP |拡張期血圧 |

|diastolic descent rate |DDR |拡張期後退速度 |

|diffuse | |びまん性 |

|dilated cardiomyopathy |DCM |拡張型心筋症 |

|dissecting aortic aneurysm |DAA |解離性大動脈瘤 |

|distal |D |遠位の |

|doming | |ドーム形成 |

|double outlet right ventricle |DORV |両大血管右室起始 |

|double product |DP |血圧と心拍数の積 |

|dyskinesis | |逆方向運動 |

|dyspnea | |呼吸困難 |

|ejection fraction |EF |駆出分画 |

|electrocardiogram |ECG |心電図 |

|end diastole |ED |拡張末期 |

|end systole |ES |収縮末期 |

|end-diastolic dimension |EDD |拡張末期径 |

|end-diastolic volume |EDVI |拡張末期容積 |

|end-systolic dimension |ESD |収縮末期径 |

|end-systolic pressure |ESP |収縮末期圧 |

|end-systolic volume |ESV |収縮末期容積 |

|endocardial cushion defect |ECD |心内膜床欠損症 |

|endocardium |EC |心内膜 |

|endocardium |ENDO |心内膜 |

|epicardial |EPI |心外膜の |

|epicardium | |心外膜 |

|external carotid artery |ECA |外頸動脈 |

|false lumen |FL |偽腔 |

|fever of unknown origin |FUO |原因不明熱 |

|fossa ovalis |FO |卵円窩 |

|fractional shortening |FS |左室内径短縮率 |

|frame rate |FR |単位時間当たりの画面表示数 |

|heart failure |HF |心不全 |

|heart rate |HR |心拍数 |

|heart transplantation |HT |心移植 |

|hemodialysis |HD |血液透析 |

|human immunodeficiency virus |HIV |HIVウイルス |

|hypereosinophilic syndrome |HES |好酸球増多症候群 |

|hyperkinesis | |運動異常(過運動) |

|hypertension |HT |高血圧症 |

|hypertrophic cardiomyopathy |HCM |肥大型心筋症 |

|hypertrophic non-obstructive cardiomyopathy |HnOCM |非閉塞性肥大型心筋症 |

|hypertrophic obstructive cardiomyopathy |HOCM |閉塞性肥大型心筋症 |

|hypokinesis | |低運動 |

|hypoplastic left heart syndrome |HLHS |左心低形成症候群 |

|idiopathic cardiomyopathy |ICM |特発性心筋症 |

|idiopathic dilated cardiomyopathy |DCM |特発性拡張型心筋症 |

|idiopathic hypertrophic subaortic stenosis |IHSS |特発性肥大型大動脈弁下狭窄症 |

|implantable cardioverter-defibrillator |ICD |埋込型除細動器 |

|infective endocarditis |IE |感染性心内膜炎 |

|inferior vena cava |IVC |下大静脈 |

|insulin dependent diabetes mellitus |IDDM |インスリン依存性糖尿病 |

|intactness | |無傷 |

|interatrial septum |IAS |心房中隔 |

|internal carotid artery |ICA |内頸動脈 |

|interruption of the aortic arch |IAA |大動脈弓離断 |

|interventricular septum |IVS |心室中隔 |

|interventricular septum thickness |IVST |心室中隔壁厚 |

|intra aortic balloon pumping |IABP |大動脈内バルーンパンピング |

|intravascular ultrasound |IVUS |血管内超音波 |

|ischemic dilated cardiomyopathy |ICM |虚血性拡張型心筋症 |

|ischemic heart disease |IHD |虚血性心疾患 |

|isovolumic contraction time |ICT |等容収縮時間 |

|isovolumic relaxation time |IVRT |等容弛緩時間 |

|l-transposition of the great arteries |L-TGA |l-大血管転位 |

|lateral | |側面の |

|left anterior descending coronary artery |LAD |左前下行枝 |

|left anterior oblique |LAO |左前斜位 |

|left atrial appendage |LAA |左心耳 |

|left atrial dimension |LAD |左房径 |

|left atrium |LA |左房 |

|left bundle branch block |LBBB |左脚ブロック |

|left circumflex branch |LCx |左回旋枝 |

|left main coronary artery |LMCA |左冠動脈主幹部 |

|left superior vena cava |LSVC |左上大静脈 |

|left ventricular diameter at end diastole |LVDD |左室拡張末期径 |

|left ventricular diameter at end systole |LVDS |左室収縮末期径 |

|left ventricular ejection fraction |LVEF |左室駆出分画 |

|left ventricular end-diastolic diameter |LVEDD |左室拡張末期径 |

|left ventricular end-diastolic dimension |LVDd |左室拡張末期径 |

|left ventricular end-diastolic pressure |LVEDP |左室拡張末期圧 |

|left ventricular end-diastolic volume |LVEDV |左室拡張末期容積 |

|left ventricular end-systolic diameter |LVESD |左室収縮末期径 |

|left ventricular end-systolic pressure |LVESP |左室収縮末期圧 |

|left ventricular end-systolic volume |LVESV |左室収縮末期容積 |

|left ventricular hypertrophy |LVH |左室肥大 |

|left ventricular internal dimension |LVID |左室内径 |

|left ventricular internal dimension in diastole |LVDd |左室拡張末期圧 |

|left ventricular internal dimension in systole |LVDs |左室収縮末期径 |

|left ventricular mass |LVM |左室心筋重量 |

|left ventricular outflow tract |LVOT |左室流出路 |

|left ventricular posterior wall thickness |LVPWth |左室後壁厚 |

|left ventricular stroke volume |SV |左室一回拍出量 |

|left ventricular stroke work |SW |左室一回拍出仕事 |

|left ventricular systolic dimension |LVSD |左室収縮末期径 |

|left ventricular systolic pressure |LVSP |左室収縮末期圧 |

|left ventricule |LV |左心室 |

|left ventriculography |LVG |左室造影 |

|low output syndrome |LOS |低心拍出量症候群 |

|LV hypertrophy |LVH |左室肥大 |

|LV internal dimension |LVID |左室内径 |

|magnetic resonance imaging |MRI |核磁気共鳴画像診断法 |

|malaise | |不快 |

|malignant melanoma |MM |悪性黒色腫 |

|mean blood pressure |MBP |平均血圧 |

|mean pressure gradient |MPG |平均圧較差 |

|mean pulmonary arterial pressure |MPA |平均肺動脈圧 |

|metastasis |meta |ガン転移 |

|midclavicular line |m.c.l |鎖骨中線 |

|midsternal line |m.s.l |胸骨中線 |

|mild | |軽度 |

|mitral annular calcification |MAC |僧帽弁輪石灰化 |

|mitral annuloplasty |MAP |僧帽弁輪形成術 |

|mitral annulus |MA |僧帽弁輪 |

|mitral atresia |MA |僧帽弁閉鎖 |

|mitral insufficiency |MI |僧帽弁閉鎖不全 |

|mitral regurgitation |MR |僧帽弁逆流 |

|mitral ring calcification |MRC |僧帽弁輪石灰化 |

|mitral stenoinsufficiency |MSI |僧帽弁狭窄兼閉鎖不全 |

|mitral stenosis |MS |僧帽弁狭窄症 |

|mitral stenosis and regurgitation |MSR |僧帽弁狭窄兼逆流 |

|mitral valve |MV |僧帽弁 |

|mitral valve area |MVA |僧帽弁口面積 |

|mitral valve plasty |MVP |僧帽弁形成術 |

|mitral valve prolapse |MVP |僧帽弁逸脱 |

|mitral valve replacement |MVR |僧帽弁置換 |

|mixed connective tissue disease |MCTD |混合性結合組織病 |

|moderate | |中等度 |

|muco cutaneous lymph node syndrome |MCLS |急性皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病) |

|muco cutaneous lymph node syndrome |MLNS |急性皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病) |

|multiple sclerosis |MS |多発性硬化症 |

|multivessel disease |MVD |多枝(冠動脈)疾患 |

|muscular dystrophy |MD |筋ジストロフィー |

|myocardial infarction |MI |心筋梗塞 |

|myocardium | |心筋 |

|myotonic dystrophy |DM |筋緊張性ジストロフィ |

|myotonic dystrophy |MD |筋緊張性ジストロフィ |

|myxoma | |粘液腫 |

|nitroglycerin |NTG |ニトログリセリン |

|non-insulin-dependent diabetes mellitus |NIDDM |インスリン非依存性糖尿病 |

|normokinesis | |正常運動 |

|not done |ND |未施行 |

|not significant |NS |有意でない |

|nothing abnormal detected |NAD |異常所見なし |

|obesity | |肥満 |

|open aortic commissurotomy |OAC |(直視下)大動脈弁交連切開術 |

|open mitral commissurotomy |OMC |(直視下)僧帽弁交連切開術 |

|opening snap |OS |僧帽弁開放音 |

|ostium | |開口部 |

|pacemaker |PM |ペースメーカー |

|papillary muscles |PM |乳頭筋 |

|paradoxical septal motion | |心室中隔奇異性運動 |

|parasternal | |胸骨傍 |

|paravalvular leakage | |弁周囲逆流 |

|patent ductus arteriosus |PDA |動脈管開存症 |

|patent foramen ovale |PFO |卵円孔開存 |

|percent fractional shortening |%FS |%左室内径短縮率 |

|percutaneous mitral balloon valvotomy |PMV |経皮経管僧帽弁バルーン形成術 |

|percutaneous transluminal coronary angioplasty |PTCA |経皮経管冠動脈形成術 |

|percutaneous transluminal coronary recanalization |PTCR |経皮経管冠動脈再疎通術 |

|percutaneous transluminal mitral commissurotomy |PTMC |経皮経管僧帽弁交連部裂開術 |

|pericardial effusion |PE |心嚢液 |

|pericardium | |心膜 |

|peripheral arterial disease |PAD |末梢動脈疾患 |

|peripheral vascular resistance |PVR |末梢血管抵抗 |

|perivalvular leakage | |弁周囲逆流 |

|persistent left superior vena cava |PLSVC |左上大静脈遺残 |

|polyarteritis nodosa |PN |結節性多発性動脈炎 |

|polymyositis |PM |多発性筋炎 |

|positron emission tomography |PET |ポジトロンCT |

|posterior descending coronary artery |PDA |後下行枝 |

|posterior LV wall thickness |PWT |左室後壁厚 |

|posterior mitral leaflet |PML |僧帽弁後尖 |

|posterior papillary muscle |PPM |後乳頭筋 |

|premature ventricular contraction |PVC |心室性期外収縮 |

|pressure half time |PHT |圧半減時間 |

|primary pulmonary hypertension |PPH |本態性肺高血圧症 |

|primum defect |(ASD) |一次孔欠損 |

|progressive systemic sclerosis |PSS |進行性全身性強皮症 |

|prosthetic valve |PV |人工弁 |

|prosthetic valve endocarditis |PVE |人工弁感染 |

|proximal | |近位 |

|proximal isovelocity surface area |PISA |近位部等流速表面 |

|pseudoaneurysm |PAN |偽性心室瘤 |

|pseudoasynergy of left ventricule |PALV |偽性左室壁運動異常 |

|pulmonary arterio venous fistula |PAVF |肺動静脈瘻 |

|pulmonary artery |PA |肺動脈 |

|pulmonary artery pressure |PAP |肺動脈圧 |

|pulmonary atresia |PA |肺動脈弁閉鎖症 |

|pulmonary capillary wedge pressure |PCWP |肺動脈楔入圧 |

|pulmonary embolism |PE |肺塞栓症 |

|pulmonary emphysema |PE |肺気腫 |

|pulmonary flow/systemic flow |QP/QS |肺体血流量比 |

|pulmonary hypertension |PH |肺高血圧症 |

|pulmonary insufficiency |PI |肺動脈弁閉鎖不全症 |

|pulmonary stenosis |PS |肺動脈弁狭窄症 |

|pulmonary vascular resistance |PVR |肺血管抵抗 |

|pulmonary vein |PV |肺静脈 |

|regional wall motion |RWM |局所壁運動 |

|reverberation | |多重反射 |

|rheumatic fever |RF |リウマチ熱 |

|rheumatoid arthritis |RA |慢性関節リウマチ |

|right anterior oblique |RAO |右前斜位(第1斜位) |

|right atrial appendage |RAA |右心耳 |

|right atrial pressure |RAP |右房圧 |

|right atrium |RA |右房 |

|right axis deviation |RAD |右軸偏位 |

|right bundle-branch block |RBBB |右脚ブロック |

|right coronary artery |RCA |右冠動脈 |

|right pulmonary artery |RPA |右肺動脈 |

|right ventricular ejection fraction |RVEF |右室駆出率 |

|right ventricular outflow tract |RVOT |右室流出路 |

|right ventricule |RV |右心室 |

|right ventricule hypertrophy |RVH |右室肥大 |

|rule out |R/O |除外 |

|ruptured chordae |RCT |腱索断裂 |

|saphenous vein graft |SVG |伏在静脈グラフト |

|scleroderma |SD |強皮症 |

|secundum defect |(ASD) |二次孔欠損 |

|severe | |重度 |

|Sjogren's syndrome |SjS |シェーグレン症候群 |

|stroke volume |SV |1回心拍出量 |

|subacute bacterial endocarditis |SBE |亜急性細菌性心内膜炎 |

|subcostal | |肋骨弓下 |

|subxiphoid | |剣状突起下 |

|superior vena cava |SVC |上大静脈 |

|suprasternal | |胸骨上窩の |

|supravalvular aortic stenosis |SVAS |大動脈弁上部狭窄症 |

|systemic lupus erythematosus |SLE |全身性エリテマトーデス |

|systemic vascular resistance |SVR |体血管抵抗 |

|systolic anterior motion of the mitral valve |SAM |収縮期僧帽弁前方運動 |

|systolic blood pressure |SBP |収縮期血圧 |

|tetralogy of Fallot |TOF |ファロー四徴症 |

|thickness of interventricular septum |IVSth |心室中隔厚 |

|thickness of left ventricular posterior wall |LVPWth |左室後壁厚 |

|thoracic aortic aneurysm |TAA |胸部大動脈瘤 |

|three-vessel disease |3-VD |冠動脈3枝病変 |

|thrombo endarterectomy |TAE |血栓内膜摘除術 |

|thromboangiitis obliterans |TAO |閉塞性血栓性血管炎(バージャー病) |

|thrombus |TH |血栓 |

|total peripheral resistance |TPR |総末梢血管抵抗 |

|totally anomalous pulmonary venous return |TAPVR |総肺静脈還流異常症 |

|transesophageal echocardiography |TEE |経食道心エコー検査 |

|transient ischemic attack |TIA |一過性脳虚血発作 |

|transposition of the great arteries |TGA |大血管転位症 |

|transthoracic echocardiography |TTE |経胸壁心エコー検査 |

|transvalvular leakage | |弁輪内逆流 |

|tricuspid annuloplasty |TAP |三尖弁弁輪形成術 |

|tricuspid atresia |TA |三尖弁閉鎖 |

|tricuspid insufficiency |TI |三尖弁閉鎖不全症 |

|tricuspid regurgitation |TR |三尖弁逆流 |

|tricuspid stenosis |TS |三尖弁狭窄症 |

|tricuspid valve |TV |三尖弁 |

|true lumen |TL |真腔 |

|truncus arteriosus |TA |総動脈管 |

|tuberculosis |TB |結核 |

|two dimensional echocardiography |2DE |2次元心エコー検査 |

|two-vessel disease |2-VD |2枝病変 |

|ultrasonic cardiogram |UCG |心エコー図 |

|ultrasound |US |超音波 |

|unstable angina pectoris |UAP |不安定狭心症 |

|vegetation | |疣腫 |

|velocity half time |VHT |血流速半減時間 |

|ventricular fibrillation |VF |心室細動 |

|ventricular septal defect |VSD |心室中隔欠損 |

|ventricular septal perforation |VSP |心室中隔穿孔 |

|ventricular septal rupture |VSR |心室中隔破裂 |

|verrunca | |疣贅 |

|wall motion abnormality |WMA |壁運動異常 |

|within normal limits |WNL |正常範囲内 |

脳神経外科

神経内科

脳出血

1,概念、病態

 脳内の血腫が神経を破壊。また、頭蓋内圧亢進が進行し、意識障害をきたす。

2,疫学

 発症頻度

 好発年齢

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

 高血圧による血管の壊死、動静脈奇形、アミロイドーシス、凝固能の異常により血管が破壊される。

 被殻:レンズ核線条体動脈

 視床:前脈絡叢動脈、前視床穿通枝動脈、後視床穿通枝動脈(後大脳動脈からの穿通枝動脈)

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状

 

| |被殻 |視床 |小脳 |橋 |

|片麻痺 |+ |+ |- |四肢麻痺 |

|顔面神経麻痺 |反対側、中枢性 |反対側、中枢性 |同側、末梢性、軽度 |同側、末梢性 |

|感覚障害 |+ |+ |- |+ |

|発症時意識障害 |- |± |- |+ |

|初期歩行不能 |- |- |+ |+ |

|嘔吐 |ときに+ |ときに+ |+ |ときに+ |

|水平共同偏視 |+ |+ |+ |- |

|方向 |病巣側 |病巣側、下方 |健側 | |

|瞳孔の大きさ |正常 |様々 |小 | |

|瞳孔反応 |+ |-のこともある |+ |+ |

|Oculocephalic反射 |+ |+ |- |+ |

|半盲 |+ |± |- |- |

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

  CT:直後は高吸収域、慢性期は低吸収域

 髄液検査:血性髄液、脳ヘルニアのリスク有

8,分類

 出血部位:被殻(40%)、視床(30%)、橋・小脳・皮質(10%)

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

10,治療

 観血的治療

  血腫除去術:被殻、小脳、皮質下出血に適応。

 非観血的治療

  血圧管理

  脳浮腫対策:浸透圧性利尿薬(グリセロール製剤)、マンニトール

  リハビリテーション

11,予後

脳梗塞

1,概念、病態

 脳血栓:脳血管の動脈硬化性の病変部で作られたアテローム変化により脳動脈が塞がれたもの。軽快、進行など、症状が動揺しうる。

 脳塞栓:主に心臓で作られたアテローム血栓により脳動脈が塞がれたもの。数分以内で症状が完成。

 ラクナ梗塞:画像診断で15mm以下の梗塞。予後良好だが、多発すると脳血管性痴呆の原因になる。

 視床症候群(Dejerine-Roussy症候群):視床膝状体動脈が詰まる。

 Weber症候群:視床穿通枝動脈が詰まる。錐体路と動眼神経を壊したもの。

 Benedikt症候群:視床穿通枝動脈が詰まる。Weber+赤核まで壊したもの。

 Millard-Gubler症候群:脳底動脈の傍正中枝が詰まる。外転神経、顔面神経を壊す。

 Wallenberg症候群:後下小脳動脈が詰まる。下小脳脚、三叉神経脊髄路核、前庭神経核、舌咽・迷走神経核、交感神経下行路、脊髄視床路が壊される。

2,疫学

 発症頻度

 好発年齢

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

  CT:発症から24時間ほどで脳浮腫により低吸収域として写る。

  MRI:発症から3時間ほどでT2高吸収域として写る。

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

10,治療

 観血的治療

 非観血的治療

  血圧管理

  脳浮腫対策

  血栓溶解療法:ウロキナーゼ

  抗凝固療法:へパリン、ワーファリン

  抗血小板薬:TXA2合成阻害薬

11,予後

脳腫瘍

1,概念、病態

 頭蓋内、脊柱管内に発生した腫瘍を総称する。

2,疫学

 発症頻度 全体として8-10/10万

 好発年齢 60才代がピーク。神経膠腫、髄膜腫、下垂体線腫、シュワン細胞腫の順に多い。

 組織別頻度

神経節細胞腫 171 0.3

退形成性神経節細胞腫 35 0.1

神経芽細胞腫 77 0.1

星細胞腫 3,908 7.5

退形成性星細胞腫 2,499 4.8

乏突起膠腫 490 0.9

退形成性乏突起膠腫 92 0.2

混合性神経膠腫 272 0.5

上衣腫 422 0.8

退形成性上衣腫 133 0.3

脈絡叢乳頭腫 147 0.3

悪性脈絡叢乳頭腫 29 0.1

膠芽腫 4,713 9.0

髄芽腫 591 1.1

神経鞘腫 5,397 10.3

神経線維腫症 155 0.3

悪性神経鞘腫 24 0.0

髄膜種 13,679 26.2

悪性髄膜種 302 0.6

血管芽腫 894 1.7

血管外皮種 124 0.2

ジャーミノーマ 1,037 2.0

松果体細胞腫 99 0.2

松果体芽細胞腫 59 0.1

下垂体腺腫 2,063 4.0

   非機能腺腫 3,250 6.2

   成長ホルモン産生腺腫 1,604 3.1

   プロラクチン産生腺腫 1,847 3.5

   ACTH産生腺腫 399 0.8

   他の機能性腺腫 156 0.3

悪性下垂体腺腫 11 0.0

頭蓋咽頭腫 1,834 3.5

下垂体神経膠腫 11 0.0

奇形腫 100 0.2

悪性奇形腫 86 0.2

絨毛上皮腫 46 0.1

胎児性癌 63 0.1

卵黄嚢腫 43 0.1

他の胚細胞腫瘍 103 0.2

類皮腫 125 0.2

類表皮のう胞 680 1.3

脊索腫 245 0.5

骨軟骨腫瘍 225 0.4

脂肪腫 108 0.2

悪性リンパ腫 1,527 2.9

他の肉腫 106 0.2

原発性黒色腫 44 0.1

分類されない神経膠腫 393 0.8

その他 1,778 -

総症例数 52,196

3,分類

 WHO分類

1. Tumors of Neuroepithelial Tissue

 1.1 Astrocytic tumors

   astrocytoma

    variants : fibrillary,protoplasmic,gemistocytic

   anaplastic (malignant) astrocytoma

   glioblastoma

    variants : giant cell glioblastoma,gliosarcoma

   pilocytic astrocytoma

   pleomorphic xanthoastrocytoma

   subependymal giant cell astrocytoma (Tuberous sclerosis)

 1.2 Oligodendroglial tumors

   oligodendroglioma

   anaplastic (malignant) oligodendroglioma

 1.3 Ependymal tumors

   ependymoma

    variants : cellular,papillary,clear cell

   anaplastic (malignant) ependymoma

   myxopapillary ependymoma

   subependymoma

 1.4 Mixed gliomas

   oligo-astrocytoma

   anaplastic (malignant) oligo-astrocytoma

   others

 1.5 Choroid plexus tumors

   choroid plexus papilloma

   choroid plexus carcinoma

 1.6 Neuroepithelial tumors of uncertain origin

   astroblastoma

   polar spongioblastoma

   gliomatosis cerebri

 1.7 Neuronal and mixed neuronal-glial tumors

   gangliocytoma

   dysplastic gangliocytoma of cerebellum (Lhermitte Duclos)

   desmoplastic infantile ganglioglioma

   dysembryoplastic neuroepithelial tumor

   ganglioglioma

   anaplastic (malignant) ganglioglioma

   central neurocytoma

   paraganglioglioma of the film terminale

   olfactory neuroblastoma (aesthesioneuroblastoma)

    variants : olfactory neuroepithelioma

 1.8 Pineal parenchymal tumors

   pineocytoma

   pineoblastoma

   mixed/transitional pineal tumors

 1.9 Embryonal tumors

   medulloepithelioma

   neuroblastoma

    variants : ganglioneuroblastoma

   ependymoblastoma

   primitive neuroectodermal tumors (PNETs)

   medulloblastoma

    variants : desmoplastic neuroblastoma,

          medullomyoblastoma,melanotic medulloblastoma

2. Tumors of Cranial and Spinal Nerves

 2.1 Schwannoma (Neurilemmoma,Neurinoma)

   variants : cellular,plexiform,melanotic

 2.2 Neurofibroma

   circumscribed (solitary)

   plexiform

3. Tumors of the Meninges

 3.1 Tumors of meningothelial cells

   meningioma

    variants : meningothelial,fibrous [fibroblastic],transitional[mixed],

          psammomatous,angiomatous,microcystic,secretory,clear cell,

          chordoid,lymphoplasmacyte-rich,metaplastic

   atypical meningioma

   papillary meningioma

   anaplastic [malignant] meningioma

 3.2 Mesenchymal,non-meningothelial tumors

   osteocartilaginous tumors

   lipoma

   fibrous histiocytoma

   others

   hemangiopericytoma

   chondrosarcoma

    variants : mesenchymal chondrosarcoma

   malignant fibrous histiocytoma

   rhabdomyosarcoma

   meningeal sarcomatosis

   others

 3.3 Primary melanocytic lesions

   diffuse melanosis

   melanocytoma

   malignant melanoma

    variants : meningeal melanomatosis

 3.4 Tumors of uncertain histogenesis

   hemangioblastoma (capillary hemangioblastoma)

4. Lymphomas and Hemopoietic Neoplasms

 4.1 malignant lymphomas

 4.2 plasmacytoma

 4.3 granulocytic sarcoma

 4.4 others

5. Germ cell Tumors

 5.1 germinoma

 5.2 embryonal carcinoma

 5.3 yolk sac tumor [endodermal sinus tumor]

 5.4 choriocarcinoma

 5.5 teratoma (immature,mature,teratoma with malignant transformation)

 5.6 mixd germ cell Tumors

6. Cysts and Tumor-like lesions

 6.1 Rathke cleft cyst

 6.2 epidermoid cyst

 6.3 dermoid cyst

 6.4 colloid cyst of the third ventricle

 6.5 enterogenous cyst

 6.6 neuroglial cyst

 6.7 granular cell tumor (choristoma,pituicytoma)

 6.8 hypothalamic neuronal hamartoma

 6.9 nasal glial hetarotopia

 6.10 plasma cell granuloma

7. Tumors of the Sellar Region

 7.1 pituitary adenoma

 7.2 pituitary carcinoma

 7.3 craniopharyngioma

   variants : adamantinomatous,papillary

8. Local Extensions from Regional Tumors

 8.1 paraganglioma [chemodectoma]

 8.2 chordoma

 8.3 chondroma,chondrosarcoma

 8.4 carcinoma

9. Metastatic Tumors

10. Unclassified Tumors

髄膜腫

1,概念、病態

2,疫学

 発症頻度 27/100万人

 好発年齢 30歳以上が95%

 男女差 男:女=1:2.7

 遺伝性 22q NF2遺伝子欠失・異常が60%

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状 頭痛(48%)、脳神経麻痺(45%)、運動麻痺(35%)、けいれん(31%)、記憶障害(27%)、視力障害(26%)、歩行障害(26%)、言語障害(16%)、行動障害(14%)、小脳症状(14%)、意識障害(7%)

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

  頭部単純X線 過骨、骨破壊、石灰化(良性の27%のみ)

  頭部単純CT 内部に石灰化

  MRI T1等・軽度低T2軽度・中等度高

  脳血管 sun-burst appearance、diffuse overshadowing、marginal vessels

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

10,治療

 観血的治療

  原則的に全摘。

  Simpsonのgrading

   Ⅰ:肉眼的全摘、硬膜付着部除去、異常骨除去・・再発率9%

   Ⅱ:肉眼的全摘、硬膜付着部の電気凝固・・19%

   Ⅲ:肉眼的全摘、他はそのまま・・29%

   Ⅳ:部分切除・・39%

   Ⅴ:減圧術のみ施行

 非観血的治療

  γ-knife 全照射できた例ではSimpson Grade Ⅰと同等の効果。

11,予後

血管芽腫

1,概念、病態

2,疫学

 原発脳腫瘍の1.7%

 発症頻度 2/100万

 好発年齢 35-45歳

 男女差 男:女= 1.1:1

 遺伝性 優性遺伝であると言われる

 好発部位 小脳半球(70-80%)、小脳虫部(10-15%)、脳幹(10%)

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見 青みがかった赤色で、境界明瞭。

 組織所見 毛細血管の密な配列、海綿状血管からなり、腫瘍細胞は脂肪を含んで細胞質の明るい多形性の細胞である。内皮のマーカーであるⅧ因子関連抗原を有していない。

5,症状

 主要症状とその性状 頭痛(76%)

 合併症 多血症(Hb 16g/dl以上、腫瘍がエリスロポエチン産生)

6,理学所見

 うっ血乳頭(70-90%)、小脳症状(61-70%)、眼振(42-62%)

7,検査所見

 血液検査 多血症

 画像所見

  MRI 充実成分はT1低T2高、壁在結節部はT1T2とも高

  血管撮影 小脳の栄養血管が腫瘍と一致して見える

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

10,治療

 観血的治療

  腫瘍の全摘が基本であるが、多中心性のものが10%あり、境界不明瞭なものが20-29%あり、この場合は全摘困難となる。

  また、30歳以下であること、von Hippel-Lindau病であること、多中心性であること、組織学的にのう胞形成頻度が低いこと、間質細胞が少ないことなどが再発のリスクファクターとなる。

 非観血的治療

  γ-knife

11,予後

 全体では26-35%が腫瘍死、15年生存率57%。

神経鞘腫

1,概念、病態

2,疫学

 発症頻度 10/100万人

 好発年齢 40-70歳

 男女差 男:女=1:1.3

 遺伝性

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状 聴力障害(70-85%)、耳鳴り、めまい、歩行不安定

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

  頭部X線 内耳孔が漏斗状、拡張

  単純CT 等・低吸収

  増強CT 比較的均一な高吸収、リング状濃染も。

  MRI T1低T2高

  椎骨動脈写 外頚動脈から栄養されているが、大きくなるとAICAからも栄養される。

  聴力テスト 言語識別低下。高音から障害される。

  ABR Ⅰ-Ⅴ波延長、Ⅱ波以降の消失

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

10,治療

 観血的治療

 非観血的治療

11,予後

血管外皮腫

1,概念、病態

2,疫学

 発症頻度 0.2/100万人

 好発年齢

 男女差

 遺伝性

3,発症機序

4,病理

 肉眼所見 充実性で、カプセルに包まれ、時に分葉化していて、肉眼的に髄膜腫とかわりはない

 組織所見 腫瘍細胞は細胞境界のはっきりしない胞体を有し、卵円形や不整形の核を有する。核分裂が増加していることが多い。縦横に分布する血管および腫瘍細胞を囲むように好銀繊維が見られる。腫瘍細胞間に好銀繊維がみられることが特徴である。髄膜腫では好銀線維は、腫瘍細胞塊を取り囲んで存在するが、腫瘍細胞の間にははいっていない。髄膜腫に特徴的な渦巻(whorl)形成や砂粒体は認められない。

5,症状

 主要症状とその性状

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 画像所見

  造影CT 著明な造影効果がみられる。

  脳血管撮影 内頸動脈系からの流入血管を認める場合が多く、内頚外頸動脈からの2重支配を認めることが多いといわれる。外頚からの流入動脈は細かい不規則な流入血管があり、"fluffy"な(ふわふわした、綿毛のような)血管造影像といわれる。

  MRI T1強調画像で脳実質と等吸収域、T2強調画像で灰白質よりやや明るい。

  ガドリニウム造影像 びまん性の造影を示し、flow-voidを示す部分があり、太い流入血管を示している。

8,分類

 臨床病期分類

 病理学的分類

9,診断

10,治療

 手術による完全摘出が望まれるが、まとまった報告が少なく、治療法は確立されていない。

11,予後

 神経症候は髄膜腫と臨床的に異なることはなく臨床的には髄膜腫と診断されるが、きわめて悪性の経過をとるのが特徴である。すなわち局所再発が1年から8年(平均4年)の間に報告により26-80%(平均158/278,57%)みられる。さらに遠隔転移(肝臓、肺、骨格筋,骨、膵臓、皮膚、軟部組織、副腎、甲状腺、胸郭、乳腺)が58ー85%(平均60/278,21.5%)にみられ、平均生存は58から84カ月といわれる。

泌尿器科

膀胱癌

1,概念、病態

 膀胱に発生する腫瘍。多発性、異所性再発性の傾向がある。膀胱上皮性腫瘍の90%以上が移行上皮癌。

2,疫学

 発症頻度 男 6.8/10万人、女1.7/10万人。喫煙者は非喫煙者の2-10倍。

 好発年齢 50-70歳

 男女差 男:女=3:1

 遺伝性

3,発症機序

 芳香族アミン代謝産物(塗装業、ゴム工場に多い)、サッカリン、シクロフォスファミド、コーヒー、タバコ、膀胱結石、感染症(ビルハイツ住血吸虫)による慢性刺激などが発癌の原因となる。膀胱癌の3-4割が喫煙者に発症していると言われる。

第9番染色体長腕ヘテロ接合性消失、第17番染色体短腕p53遺伝子の欠失・変異が癌発生と進展に関与しているといわれる。このほか、RB遺伝子、第11番染色体短腕の異常などの報告もある。

4,病理

 肉眼所見

 組織所見

5,症状

 主要症状とその性状:

  無症候性血尿(80%以上)、血尿・止血を繰り返す、排尿障害、疼痛。

  頻尿、排尿痛、尿意切迫(上皮内癌の80%)

 合併症

6,理学所見

7,検査所見

 血液検査

 尿沈渣

 尿細胞診:grade1,2,3でそれぞれ10%,50%,90%の陽性率。フローサイトメトリーでは膀胱癌の80%で異常が検出される。

 膀胱鏡:腫瘍の形態、腫瘍周囲粘膜の状態、腫瘍数、大きさ、部位、表面の状態、茎の有無

 生検:腫瘍の組織型、分化度、深達度を調べる。

 画像所見:主に診断後、治療方針を決めるために用いる。

  超音波:尿充満時、膀胱に突出する高エコー像として腫瘍を描出。

  CT、MRI:膀胱外への進展、所属リンパ節の腫大をチェックする。

  排泄性尿路造影:腎盂、尿管に発生してないかをチェックする。

  骨シンチグラフィー:遠隔転移の有無を調べる。

8,分類

 臨床病期分類

  T分類

   T0:原発腫瘍を認めない

   Ta:非浸潤性乳頭癌

   Tis上皮内癌

   T1:粘膜下結合組織に浸潤する腫瘍

T2a:浅筋層に浸潤する腫瘍

T2b:深筋層に浸潤する腫瘍

T3a:膀胱周囲脂肪組織に顕微鏡的に浸潤する腫瘍

T3b:膀胱周囲脂肪組織に肉眼的に浸潤する腫瘍

T4a:前立腺または子宮または膣に浸潤する腫瘍

T4b:骨盤壁または腹壁に浸潤する腫瘍

  N分類

   N0:所属リンパ節転移なし

N1:最大径が2cm以下の一個の所属リンパ節転移

N2:最大径が2-5cmの一個の所属リンパ節転移、または5cm以下の多数個の所属リンパ節転移

N3:最大径が5cm以上のリンパ節転移

  M分類

   M0:遠隔転移なし

M1:遠隔転移あり

  grade分類

   grade1:細胞、構造ともに異型度が軽い

grade2:細胞、構造いずれかに中等度の異型あり

grade3:細胞、構造いずれかの異型度が強い

  以上を踏まえた上で

  表在性腫瘍:Ta, T1(grade 1,2)

  浸潤性腫瘍:T1(grade 3)、T2-T4

  

 病理学的分類:

  良性上皮腫瘍

   尿路上皮乳頭腫

   尿路上皮乳頭腫内反型

   扁平上皮乳頭腫

   絨毛腺腫

  悪性上皮性腫瘍

   上皮内癌:乳頭型でない、flat carcinomaの像を呈する。

   移行上皮癌

   扁平上皮癌

   腺癌:三角部、尿膜管から発生。

    尿膜癌

    印環細胞癌

    中腎癌

   小細胞癌

   未分化癌

   その他

  良性非上皮性腫瘍

  悪性非上皮性腫瘍:

9,診断

 尿細胞診にてⅣまたはⅤ、くわえて膀胱鏡で肉眼的に腫瘍を発見したら確定診断となる。

10,治療

 観血的治療

  経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt):表在性、乳頭状の場合。再発、進展あり。

  根治的膀胱全摘除術:前立腺尖部で尿路を切断。精嚢、前立腺ごと膀胱を全摘。

  単純性膀胱摘序術:膀胱頚部で尿路を切断。膀胱が完全に役に立たなくなる良性疾患の場合。

  膀胱部分切除術:病変が小さい、良性、三角部でない場合。

 非観血的治療

  膀胱内注入療法:マイトマイシンC、アドリアマイシン、BCGなど。

  放射線療法:術前補助治療、浸潤癌の治療として用いられる。

  全身化学療法:

   M-VAC療法:メトトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチン。

   CMV療法:シスプラチン、メトトレキセート、ビンブラスチン。

表在性腫瘍の治療:

 経尿道的膀胱腫瘍切除術、膀胱内注入療法

浸潤性腫瘍の治療:

 骨盤内リンパ節郭清術、根治的膀胱全摘除術(+術前放射線、術前化学療法)

11,予後

 表在性腫瘍の経尿道的膀胱腫瘍摘除術後3年再発率

  pTa:50%、pT1:70%

  grade1,2:50-60%、grade3:80%

 表在性腫瘍の浸潤癌への進展

  pTa:10%、pT1:35%

  grade1:2%、grade2:11%、grade3:55%

 浸潤性腫瘍の術後5年生存率:

|病期 |5年生存率 |

|T1 |80% |

|T2 |60% |

|T3 |40% |

|T4 |25% |

検査正常値

RBC male 440-560 female 380-520

WBC 4000-8000 NEU 48-60 LYMP 25-45 MONO 4-7 EOS 1-5 BASO 0-1

PLT 15-35

MPV 6.0-12.0 fl

Hb male 13-16g/dl female11-15 g/dl

Ht male 38-48%.9 female 34-43.9%

MCV

MCH

MCHC

Alb 3.8-5.3 g/dl

A/G 1.1-2.3

Na 135-150

Cl 98-110

K 3.5-5.3

Ca 8.4-10.2:低アルブミン血症のときは補正後Ca=実測Ca+(4-Alb)に注意

Fe male 60-210 female 50-160

P 2.9-4.3 mg/dl

Zn 70-120 μg/dl

BUN 8-22 mg/dl

CRE 0.6-0.9 mg/dl

HbA1 5.5-8.0%

HbA1c

TP 6.5-8.3 g/dl,

TG 30-149 mg/dl

TCH 130-219 mg/dl

HDL 40-90 mg/dl

CRP(-),

CPK 30-172

LDH 180-450 U/l

AST 8-38 U/l

ALT 4-43 U/l

CHE 3500-8100 U/l

γ-GTP 12-48 U/l

ALP 110-354 U/l:肝、骨、悪性腫瘍

CK male 25-180 female 20-150:筋、心臓、脳

UA 2.6-5.6

総ビリルビン 0.2-1.2 mg/dl 直接ビリルビン 0-0.4 mg/dl 間接ビリルビン 0-0.8 mg/dl

血清総蛋白 6.5-8.3 g/dl

アミラーゼ 70-230 U/l(合成基質法G7)

ICG

FDP 7μg/ml :フィブリン分解産物

PT 10-14sec

TT 8-12 sec

BNP ................
................

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