臨床試験計画



研究実施計画書

RESOLVE試験

RESOLVE試験: 植込み型除細動器患者における

呼吸・生体情報モニタリングと転帰の関連調査

Respiratory monitoring and clinical outcome

in patients with implantable cardioverter-defibrillator

目次

要約 4

1 根拠 4

1.1 心不全 4

2 目的 5

2.1 主要目的 5

2.2 副次目的 5

2.3 心不全イベントの定義 5

2.3.1 心不全の悪化 5

2.3.2 入院 6

2.3.3 心不全イベント判定委員会による最終判断 6

2.4 主要目的から除外される心不全イベント 6

3 研究デザイン 6

3.1 デザイン 6

3.2 バイアス 7

3.2.1 誤差原因となりうる要因 7

4 生物計測学、統計学 7

4.1 探索的解析 7

4.2 症例数 8

4.3 統計解析 8

4.4 不遵守及び脱落 8

5 本研究の範囲と期間 10

5.1 臨床研究実施施設と医師名 10

5.2 本研究の実現可能性 11

6 臨床研究の経過 11

6.1 概要 11

6.2 症例報告書(CRF) 11

6.3 心不全イベント判定委員会によるイベント判定報告書 12

6.4 被験者 12

6.4.1 被験者の選択 12

6.4.2 患者への情報提供及び同意の意思表示 12

6.4.3 選択基準 12

6.4.4 除外基準 12

6.5 方法 14

6.5.1 登録 15

6.5.2 製品情報と初期設定 15

6.5.3 3, 6, 9, 12, 15, 18, 21, 24か月フォローアップ 16

6.5.4 心不全イベント 17

6.5.5 研究の中止/終了 17

6.6 デバイスのプログラミング 17

6.7 有害事象 17

6.7.1 重篤な有害事象 18

6.7.2 不整脈とICD/CRT-D療法 18

6.7.3被験者の死亡 18

7 ベネフィット/リスク分析 19

7.1 被験者にとってのベネフィット 19

7.2 潜在的リスク 19

7.3 潜在的リスクの低減 19

7.4 補償 19

8 使用する医療機器 19

9 データ管理 20

9.1 データ保護 20

9.2 文書化の範囲 20

9.3 データ処理 20

9.4 データの品質保証 20

10 組織/契約上の条項 20

10.1 責任者 20

10.1.1 研究責任者(CCI) 20

10.1.2 研究分担医師と研究責任医師 21

10.1.3 心不全イベント判定委員会 21

10.2 倫理的及び法律的側面 22

11 中止基準 22

12 論文化 23

13 参考文献 23

要約

高齢化社会の進む日本では、心不全患者は増加の一途をたどっており、今後、重大かつ深刻な医療、社会問題となることが予想される。薬物療法や植込み型治療機器の費用に加えて、心不全の悪化による繰り返す入院は医療費増大の原因である。また、心不全の増悪による入院回数の増加は患者Quality of lifeを低下させるとともに、死亡率の上昇につながる。これまでの研究により心不全の増悪による入院に先立って、胸水貯留、心拍数や体重の増加、および活動性の減少などが認められることが明らかにされている。このため、生体状態を連続的にモニタリングすることにより心不全の悪化を早期に発見できれば、それに応じた治療介入を行うことで心不全の増悪による入院を回避できる可能性がある。

Boston Scientific社の植込み型除細動器(ICD)と心臓再同期治療除細動器(CRT-D)INCEPTAシリーズには、心拍変動や体動の変化に加えて、呼吸数や睡眠呼吸障害の有無などの生体情報を連日記録する機能が備わっている。本研究の主目的は、ICD、あるいはCRT-Dが植込まれたNew York Heart Association分類II度以上の心不全患者を対象として、生体情報の変化と心不全悪化による入院との相関を検討することにより、心不全悪化の早期検出と治療介入の可能性を検討することである。

1 根拠

1.1 心不全

心不全は、冠動脈疾患、高血圧、特発性拡張型心筋症などにより、心室への血液流入の阻害あるいは心室の拍出能低下を来たした病態をさす。臨床症状として、運動耐容能低下や体液貯留を伴う呼吸困難、易疲労感等がある。

疫学

心不全の患者数は、米国では520万人 [1]、EU諸国では1000万人を超えるとされ [2,3]、発症頻度は人口1000人当たり約2人である [4]。発症率、罹患率とも年齢とともに劇的に増加している [1,4]。しかし診断の困難性や、国際的な比較疫学データが不足している為、実際の心不全患者数は公表されている数字よりも多いと考えられる [5,8]。

治療

心不全治療には多数の薬物が投与され、さらに患者によってはICDや心臓再同期療法(CRT)を併用することにより、症状の軽減と死亡率の低下が得られる [2,3,6]。

多変量パラメータ予測因子モデル

INCEPTAシリーズに搭載された生体情報トレンド機能には、患者活動度、心拍数(1日及び安静時)、呼吸数、心拍変動パラメータ、がある(次表)。さらに遠隔システムLATITUDEとの併用により、血圧や体重、および患者の生活状態をモニタリングすることも可能である。

測定記録される生体情報

|心拍関連 | |

|心拍数 |最大値、最小値、平均値を示す |

|心拍変動 |5分間の平均R-R間隔の標準偏差(SDANN) |

|アクティビティレベル(活動度) |1日毎の活動レベル |

|呼吸関連 | |

|Respiratory rate trend (RRT) |1日毎の呼吸数の最大値、最小値、中央値 |

|Apnea scan (APScan) |1時間あたりの睡眠中の無呼吸低呼吸イベント回数 |

|血圧 |毎日の血圧モニタリング(LATITUDE機能による) |

|体重 |毎日の体重をモニタリング(LATITUDE機能による) |

2 目的

2.1 主要目的

主要目的は、ICDまたはCRT-Dが植込まれたNYHA II度以上の心不全患者を対象として、デバイスに記録される生体情報の変化を検討することにより、肺うっ血を伴う心不全の悪化イベントの早期発見アルゴリズムを作成することである。

2.2 副次目的

生体情報(呼吸数、睡眠呼吸障害、心拍、患者活動度)の変動と臨床背景や転帰などとの関連を調査すること、および、生体情報と不整脈発生の関連や頻拍治療内容を調べること。

2.3 心不全イベントの定義

心不全は慢性疾患であるが、経過観察の過程で急激な悪化を認めることが多く、このためフォローアップの来院日によっては状態が大きく変動している。研究分担医師は来院日ごとに心不全の悪化の有無を確認する。定義から外れる心不全の悪化は有害事象や心不全イベントとして扱わず、症例報告書(CRF)に記録する必要はない。本研究では、外来で利尿剤の投与を行ったものもしくは入院(2.3.2項)を必要とする心不全の悪化(2.3.1項)を主要目的である心不全イベントと定義する。発生した心不全イベントが主要目的である心不全イベントに該当するか否かは、2名の心不全イベント判定委員により最終判断される。

2.3.1 心不全の悪化

心不全の悪化の定義を以下に示す。

➤ 慢性心不全で病態が急に明らかに変化した場合(急性非代償性心不全)

➤ 心不全の症状や徴候が悪化した場合

心不全の悪化の判定は、画像検査、生理結果と身体所見(例:ラ音、呼吸困難、NYHA分類、肺及び/又は末梢の体液貯留等)に基づいて行う。

心不全治療のために静注薬(利尿薬、血管拡張薬、強心薬等)を使用したり、経口利尿薬を増量(フロセミドの20 mg/日以上又はそれと同等の増量、あるいはループ利尿薬にサイアザイド系利尿薬を追加する等)した場合には心不全の悪化とみなす。

2.3.2 入院

日付を超えた入院(1泊)を入院と定義する。

2.3.3 心不全イベント判定委員会による最終判断

心不全の悪化による有害事象は、入院せず外来で治療を完了した場合でも、すべて入院時心不全イベント報告書(Form D)に記録する。明らかに心不全イベントの定義を満たしていない場合であっても、心不全イベント判定委員会が詳細な評価を行う。

2.4 主要目的から除外される心不全イベント

次項の条件に1つでも該当する場合は、心不全イベントの定義(2.3項参照)に該当していても主要目的の対象外とする[?]。

➤ 植込み術、若しくはその再手術、又は心臓手術から3か月以内の場合

➤ 定義に該当する心不全イベントと判断された入院終了から1週間の場合

➤ 同一の被験者に発症した心不全関連イベントが3回目以上の場合

上記の項目で検討が必要な場合には、研究責任医師、研究分担医師、心不全イベント判定委員会により医学的判断が行われる。

定義された心不全イベントの要求事項をすべて満たすものを本研究の「主要目的である心不全イベント」とする。

3 研究デザイン

3.1 デザイン

この研究は、前向き多施設共同研究である。非盲検的研究であるため、研究分担医師と被験者は研究の進捗状況について知ることができる。ランダム化は行わない。

CRFは、登録用紙、製品情報と初期設定、フォローアップ報告書、入院時心不全イベント報告書、有害事象報告書及び循環器系薬継続使用報告書からなる。本研究で必要なフォローアップは、登録から3, 6, 9, 12, 15, 18, 21, 24か月である。

3.2 バイアス

結果にバイアスが生じることを避けるため、講じるべき措置を以下に示す。

3.2.1 誤差原因となりうる要因

心不全イベントの判定に関するバイアス

心不全イベント判定委員会の専門家が心不全イベントを評価する。心不全イベント判定委員会のメンバーは被験者の登録は行わず、またこの評価を盲検的に実施するため、測定データとイベントの相関関係が適格に確認される。

施設バイアス

全施設での研究実施状況を統一するため、以下の措置を実施する。

➤ 研究計画書(プロトコール)の交付及び研究責任医師全員による合意

➤ フォローアップ計画書に従ったフォローアップ

4 生物計測学、統計学

4.1 探索的解析

本研究の目的は仮説の検証ではなく心不全予測アルゴリズムの予測能力を向上させるために情報を収集することである。

本研究では主要目的である心不全イベントを12件得ることを目的とする。そのデータをもとに、肺うっ血を伴う心不全の悪化を早期に発見するための予測アルゴリズムを開発する。

アルゴリズム感度の計算に必要となる主要目的である心不全イベントの発症はまれであるため、その発症件数は、本研究に必要な被験者数を決定する上での重要な要素である。

特異度の計算には、十分な件数の非心不全イベントが必要である。医師が心不全悪化なしと判定したフォローアップが非心不全イベントと定義される。十分な件数の非心不全イベントを確保するために、予定された回数のフォローアップを行う必要がある。

収集されたデータに基づいて、今後開発するアルゴリズムの感度、特異度、及び95%信頼区間を推定する。

4.2 症例数

主要目的である心不全イベントに基づいて本研究で必要となる症例数を推計した。

症例数の設定では、予定されたフォローアップ期間内に必要な回数の心不全の悪化による入院が発生することが必要である。

心不全関連入院の発症のために必要な被験者数

Home CAREの被験者集団では、心不全悪化による入院率が年7%、平均入院回数は1.3回であり死亡率は年9.5%であった。また脱落率は10%であった。これは、過去に発表された大規模臨床試験結果と近い結果であった。[?]この結果に基づき、24カ月のフォローアップ期間で少なくとも20件の有効な心不全イベントを得るために、157例の登録被験者が必要であると試算した。心不全イベント数の根拠はCox比例ハザードモデルにおいて呼吸指標(一時間呼吸回数の中央値など)と心拍変動指標、アクティビティなど最大4項目の変数を投入予定としていることである。さらに、登録被験者数の試算は(12件/7%)×1.1(脱落率10%)×0.5(24カ月のフォローアップ)から算出される。本研究は、最後の登録被験者の24カ月フォローアップ終了時、または20件の有効な心不全イベントが確認された時点で終了する。

1例の被験者が複数の心不全イベントを発症した場合

心不全イベントが特定の被験者からの情報に集中することを避けるため、心不全入院回数が3回以上の被験者については、集計するイベント件数を2件までとする。

4.3 統計解析

主要目的に関する統計解析はデータ解析者が行う。計量データについては記述統計量(平均値、標準偏差、中央値、最大値、最小値)及び95%信頼区間を算出する。カテゴリカルデータについては、絶対頻度及び相対頻度を集計し、95%信頼区間を算出する。

4.4 不遵守及び脱落

死亡、遠方への転居、同意の撤回、その他の理由(後述)により追跡不能となった被験者については、その時点までに記録されたデータを解析対象とする。

本研究の過程で被験者に起こりうる変化について、以下の例を参考に脱落症例を判定する。

選択基準に関連する判定例:

➤ 被験者には随時同意を撤回する権利がある。同意の撤回が被験者の治療に影響することがあってはならない。同意を撤回した被験者は脱落例となり、臨床研究分担医師は研究中止/終了報告書を記入する。

➤ 遠隔システムLATITUDE使用の受入れを撤回しても、その後も本研究への参加の意思がある被験者については、脱落例とはしない。

除外基準に関連する判定例:

➤ 本研究の過程で発症した急性冠症候群については、有害事象報告書に記録するが、脱落例とはしない。

➤ 本研究の過程で心臓手術の必要性を医師が認めた場合は、有害事象報告書にその旨を記録するが、脱落例とはしない。

➤ 本研究の過程で心臓移植術を受けた被験者については脱落例とする。

➤ 本研究の過程で慢性腎透析を受けることとなった被験者については脱落例としない。

➤ 本研究の過程で予測される寿命が変化した被験者については、脱落例とはしない。

➤ 本研究の過程で妊娠が判明した場合は脱落例とする。

➤ 既に睡眠呼吸障害の治療を受けている患者(HOT, CPAP, ASVなど)は脱落例としない。

デバイスのプログラミングに関連する判定例:

➤ 遠隔システムLATITUDEの設定(任意)がOFFとなっていたとしても、脱落例とはならない。

➤ LATITUDEの設定がOFFになっていた期間のデータは、プログラマによるダウンロードにより収集される

5 本研究の範囲と期間

5.1 臨床研究実施施設と医師名

|  |施設名 |医師名 |所属 |役職 |

|2 |社会保険中京病院      |坪井直哉* |循環器科 |部長 |

|3 |伊勢赤十字病院       |笠井篤信* |循環器内科 |部長 |

|4 |三重大学大学院   |藤井英太郎* |循環器・腎臓内科学 |講師 |

|5 |三重大学大学院   |土肥 薫* |循環器・腎臓内科学 |助教 |

|6 |名古屋市立東部医療センター |村上善正¶ |循環器内科 |副院長 |

|7 |岐阜県総合医療センター    |広瀬武司¶ |循環器内科 |医長 |

|8 |名古屋徳洲会総合病院     |亀谷良介¶ |循環器内科 |部長 |

|9 |国立循環器病研究センター  |野田 崇* |不整脈科 |医長 |

|10 |秋田県成人病医療センター  |阿部芳久* |循環器科 |副センター長 |

|11 |厚生連高岡病院       |藤本 学¶ |循環器科 |診療部長 |

|12 |千葉大学医学部附属病院    |上田希彦¶ |循環器内科 |助教 |

|13 |金沢循環器病院       |寺井英信¶ |循環器内科 |部長 |

|14 |福井大学医学部附属病院   |夛田 浩¶ |循環器内科 |教授 |

|15 |金沢医療センター      |阪上 学¶ |循環器科 |部長 |

|16 |京都第二赤十字病院     |北村 誠¶ |救命救急センター |所長 |

|17 |京都桂病院         |溝渕正寛¶  |心臓血管センター |副部長 |

|18 |日本大学医学部附属板橋病院  |中井俊子¶ |循環器内科 |助教・外来医長 |

|19 |大阪赤十字病院       |牧田俊則¶ |不整脈内科 |部長 |

|20 |富山大学附属病院      |水牧功一¶ |臨床倫理センター |特命准教授 |

|21 |藤沢市民病院        |姫野秀朗¶ |循環器科 |診療科主任部長 |

|22 |岡山大学病院 |西井伸洋¶ |循環器内科 |助教 |

|23 |藤田保健衛生大学 |祖父江嘉洋¶ |循環器内科 |講師 |

# 研究責任者 * 研究分担医師 ¶研究責任医師

5.2 本研究の実現可能性

本研究の開始は2013年9月1日とする。被験者募集期間が12ヵ月、フォローアップ期間が24ヵ月、その後解析期間を3ヵ月とすると、研究終了は2016年11月頃になる。

6 臨床研究の経過

6.1 概要

|登録 |



|デバイスの初期設定 |



|登録から3, 6, 9, 12, 15, 18, 21カ月フォローアップ |



|研究終了(24カ月フォローアップ終了時) |

デバイスの初期設定後、研究分担医師は本研究に参加する被験者全員を24カ月間モニターする。最終来院時に、各被験者の研究は終了とし、研究中止/終了報告書に記入しなければならない。この規定は被験者全員に適用される。

登録開始 2013年9月1日

登録終了 2014年8月31日

最終登録症例観察終了 2016年8月31日

6.2 症例報告書(CRF)

研究責任医師より被験者フォルダが研究実施施設に配布される。このフォルダには患者説明文書と同意文書のほかに、以下に示すCRF とミネソタ心不全QOL 質問票が含まれる。

➤ 登録用紙 (Form A)

➤ 製品情報と初期設定(Form B)

➤ フォローアップ報告書(Form C)

➤ 入院時心不全イベント報告書(Form D)

➤ 有害事象報告書(Form E)

➤ 研究中止/終了報告書(Form F)

➤ 循環器系薬継続使用報告書(Form G)

➤ ミネソタ心不全 QOL 質問票

6.3 心不全イベント判定委員会によるイベント判定報告書

心不全イベント判定委員会のメンバーはそれぞれ独立して心不全イベントを評価し、研究依頼者に評価結果を送る。本評価について、それぞれの医師がイベント判定報告書を各自作成する。この報告書で、当該心不全イベントを「主要目的である心不全イベント」「定義から外れる心不全イベント、非心不全イベント」、「判定不能」のいずれかに分類する。心不全イベントの評価が分かれる場合は、心不全イベント判定委員会を予定し、その場でこれらのイベントについてあいまいな点を解消し、意見を一致させる。

6.4 被験者

6.4.1 被験者の選択

被験者は、研究分担医師が受け持つ対象患者から選択され、選択基準及び除外基準に照らして適格と判断され、本研究に登録された患者である。

6.4.2 患者への情報提供及び同意の意思表示

患者を本研究に登録する前に、患者への説明文書に基づいて本研究の説明を行い、同意書への署名を取得しなければならない。患者にはこの説明文書の他に、同意取得後に同意書の写しを渡さなければならない。原本は実施施設で保管する。

重篤な有害事象に関しては、参考資料(写)の提出を別途求めることがある。研究責任医師にデータを提供する際は、参考資料に被験者の個人情報が含まれてはならない。

6.4.3 選択基準

以下に示す選択基準のすべての項目に該当しなければならない。

➤ ICD/CRT-Dの植込み適応である

➤ 研究実施計画書を遵守する意思と能力があり、文書による同意が得られている患者

➤ ICD/CRT-Dの植込み予定の患者、または既に植込んでいる患者でNew York Heart Association II度以上の心不全を有する患者

➤ 遠隔システムLATITUDEの使用は任意である

6.4.4 除外基準

以下に示す除外基準のすべての項目に該当してはならない。

➤ ICD/CRT-D植込みの禁忌に該当する患者

➤ 登録前1か月以内に急性冠症候群を発症した患者

➤ 登録前1か月以内に心臓手術を受けている、又は登録時点で心臓手術が予定されている患者

➤ 心臓移植術を受けた、又は受ける可能性のある患者

➤ 心疾患以外の原因により予測される寿命が1年以下の患者

➤ 妊娠中若しくは授乳中の患者

➤ 18歳未満の患者

➤ プロトコール遵守能力に乏しい患者

➤ 他の臨床研究に参加している患者

6.5 方法

概要

| |登録 |初期設定 |3か月 |6,9,12,15,18,21, 24 |心不全 |研究の中止・ |

| | | |フォローアップ |か月 |イベント |終了 |

| | | | |フォローアップ |発生日 | |

|インフォームドコンセント |x | | | | | |

|選択/除外基準 |x | | | | | |

|人口統計学的データ |x | | | | | |

|心不全症状 |x | |x |x |x | |

|身体所見 |x | |(x) |(x) |x | |

|弁疾患(急性期のみ) | | | | |x | |

|12誘導心電図診断 |x | | | |x | |

|肺疾患 |x | | | |x | |

|胸部X線検査 | | | | |x | |

|その他検査 |任意(a) | | | |任意 | |

|心臓超音波検査 |x | | | |x | |

|病歴 |x | | | | | |

|循環器系薬剤の使用 |x |x (b) |x |x |x | |

|デバイスプログラミング | |x | | | |x |

|有害事象報告書作成 | |x |x |x |x |x |

|生体情報(インターローゲ | | |x |x | | |

|ーション) | | | | | | |

|生体情報(LATITIDEデータ | | |x |x |x | |

|コピー) | | | | | | |

|ミネソタ心不全 QOL 質問票|x | | | | |x |

|患者の状況による研究の中 | | | | | |x |

|止 | | | | | | |

(a) 植込み日の1年以上前の検査データは解析対象としない

(b) 該当する場合

6.5.1 登録

患者には説明文書に基づいて本研究の説明を行い、質疑応答の時間を十分設けた上で本研究への参加の同意を得る。登録前に選択基準と除外基準を確認し、患者が参加の基準を満たしているか否かを検討しなければならない。選択基準及び除外基準に照らして適格と判断された患者を本研究に登録する。

登録時に必要な項目は以下のとおりである。

➤ 患者への説明と同意取得

➤ 選択基準及び除外基準の確認

➤ 人口統計学的データ

➤ 心不全症状

➤ 身体所見とNYHA

➤ 12誘導心電図診断

➤ 心臓超音波検査

➤ その他検査(任意)

➤ 基礎疾患

➤ 循環器系薬物治療

➤ 肺疾患の既往歴

➤ その他の併存疾患

6.5.2 製品情報と初期設定

製品情報と初期設定情報として、植込みデータ及びデバイスの設定内容をCRFに記入する。この来院時に、被験者のデバイスを必須及び推奨される設定にプログラムする。該当する場合は、有害事象報告書と循環器系薬継続使用報告書に記入する。デバイス植込み後に採血と(NT-pro)BNP濃度測定を行っている場合は、データをCRFに記録すること(任意)。

この来院時に文書化する項目は以下のとおりである。

➤ 製品情報

➤ 植込み情報

➤ 初期デバイスインタロゲーション

➤ 必須及び推奨されるデバイスの設定

➤ 循環器系薬物療法(該当する場合)

➤ その他検査(任意)

➤ 有害事象

6.5.3 3, 6, 9, 12, 15, 18, 21, 24ヵ月フォローアップ

フォローアップの来院時(3ヵ月±1ヵ月)には、過去3カ月間の有害事象及び診療に関するデータを入手する。有害事象と心不全の悪化については1件ごとにCRFを記入する。特に被験者の心不全症状について問診を行い、必要であれば検査を実施する。来院時、プログラマを使用して、デバイスのインタロゲーションを行い、個人情報を消去した上でメモリー媒体にダウンロードを行う。ダウンロードされたメモリー媒体は研究責任医師に郵送する。

フォローアップ来院時に文書化する項目は以下のとおりである。

➤ 診療と有害事象

➤ 心不全症状

➤ 身体所見とNYHA

➤ 心不全評価

➤ デバイスインタロゲーション

フォローアップ日程と心不全検出概要図

[pic]

PARTNERS HF試験(J Am Coll Cardiol 2010; 55: 1803)では上記のように生体情報収集と心不全入院観察を30日ごとに区切って観察を続けた。RESOLVE試験も同方法で24ヵ月の観察を行う。

6.5.4 心不全イベント

研究責任医師は心不全悪化の判定を下した後に心不全イベント報告書を作成する。心不全イベント報告書は必ず有害事象報告書と関連している。いずれの場合もフォローアップ報告書は必要ない。

被験者の心不全症状について問診を行い、必要な検査を実施し、CRFに所見を記録する。

心不全イベント報告書に記載する事柄は以下のとおりである。

➤ 心不全症状

➤ 身体所見とNYHA

➤ 弁疾患(急性期のみ)

➤ 12誘導心電図診断

➤ 肺疾患・症状

➤ 胸部X線検査(任意)

➤ その他検査(任意)

➤ 心臓超音波検査

➤ 心不全悪化の主原因

➤ 循環器系薬物療法

6.5.5 研究の中止/終了

本研究を中止/終了する場合は、被験者ごとにCRFを作成し、本研究の終了及び中止理由を確認する。中止/終了時に確認が必要な項目は以下のとおりである。

➤ 本研究中止/終了時の被験者の状況

6.6 デバイスのプログラミング

デバイスの設定事項は以下のとおりである。

|デバイスの設定事項 |

|パラメータ |設定 |コメント |

|Respiratory rate trend (RRT) |ON | |

|AP Scan |ON |個々の睡眠時間に測定がなされるようにセットする(毎晩4|

| | |時間以上の睡眠中記録が必要) |

|LATITUDE |ON |任意 |

個々の症例の睡眠時間にあわせてプログラムを行う。

6.7 有害事象

本研究の過程で、被験者に好ましくない事象が発現することがある。以下、これらの事象を有害事象と呼ぶ[?]。有害事象には次のものが含まれるが、これに限らない。間欠的又は恒久的な捕捉不全、間欠的又は恒久的なセンシング不全、横隔膜刺激/横隔神経刺激、リードのディスロッジ、感染症等。これらの有害事象については研究分担医師が診断・治療を行う。好ましくない医療上の事象であっても、被験者が本研究への参加に同意する以前に発現し、その後も変化がない場合は、本研究では有害事象として扱わない。しかし、この好ましくない医療上の事象が本研究の過程で悪化した場合は、有害事象として報告しなければならない(例外:定義から外れる心不全の悪化、第2.3項の主要目的参照)。

重篤な有害事象が発現した場合は有害事象報告書に記入し、研究責任医師にCRFや他の資料と併せて送る。

6.7.1 重篤な有害事象

以下の条件に1つでも該当する有害事象は重篤な有害事象に分類される。

➤ 死に至るもの

➤ 生命に関わる病気や傷害に至るもの

➤ 恒久的な身体構造及び身体機能への障害に至るもの

➤ 入院又は入院期間の延長が必要となるもの

➤ 恒久的身体障害を防ぐために医療行為が必要となるもの

➤ その他医学的に重要な状態

研究分担医師は、発生したすべての重篤な有害事象をCRFに記入し、研究責任医師に報告する。

6.7.2 不整脈とICD/CRT-D療法

心室性不整脈とそれに関連するICD/CRT-D療法から、第6.7.1項の定義で重篤と判断される結果に発展した場合は、有害事象報告書による追加報告が必要である。

3 6.7.3被験者の死亡

臨床研究期間中に被験者が死亡した場合には、研究担当医師は、死亡原因を以下のいずれかに分類する。

1. 心臓系:製品の性能/作動等に関連しない心臓疾患による死亡(例:心筋梗塞、心筋症、頻拍性不整脈、慢性心不全、心臓腫瘍など)。心臓疾患が死亡の主原因であり、製品の不具合が原因ではないことをCRFに記入し、提出する。

2. 非心臓系:心臓に関連しない死亡原因(例:癌、脳卒中、肺疾患など)。

3. 不明・非分類:情報不足により、研究担当医師が死亡原因を特定できない場合。

4. 製品に起因:製品による有害事象が直接の死亡原因である、又は死亡原因に関連する場合。

報告義務:CRF「製品使用中止/研究中止フォーム」と「有害事象報告フォーム」を記入し、死亡分類と原因を報告する。剖検が行われた場合は、可能な限り、解剖結果のコピーを添付する。

7 ベネフィット/リスク分析

7.1 被験者にとってのベネフィット

INCEPTAは最新の医学及び技術を反映して本邦で製造販売承認された医療機器であり、本研究ではその使用目的に従って用いられる。

7.2 潜在的リスク

INCEPTAの植込み手順は類似品と変わらない。そのため、本研究への参加により、被験者に新たな負担やリスクが発生することはない。

ペースメーカ及びICD療法の合併症としては特に以下のものが知られている:壊死組織形成、血管障害、血栓症、塞栓症、ペーシング閾値上昇、センシング不良、異物拒否反応、心タンポナーデ、筋肉/神経への刺激又は植込みに起因する不整脈、植込みポケット穿孔のリスク、感染、心理的不耐性、心理的依存。

7.3 潜在的リスクの低減

本研究で使用される製品は既に上市された製品であり、表示事項は製造販売承認された内容である。研究依頼者は、ICD/CRT-D製品に表示されているもの以外のリスクが発生するとは考えていない。

7.4 補償

本研究で使用される医療機器はすべて製造販売承認を取得したものであり、被験者に発現する健康被害については、既存のペースメーカ及びICD/CRT-D療法によるものと同様の保険診療に基づく治療が可能である。

8 使用する医療機器

本研究で使用するシステムはすべて本邦で製造販売承認された医療機器であり、あくまでその使用目的に従って用いられることになる。

➤ 本体: INCEPTA ICD(VR、DR)INCEPTA CRT-D(Boston Scientific社製)

➤ リード:特に指定なし

➤ データ送信機(任意):LATITUDEコミュニケータ(Boston Scientific社製)

➤ プログラマ: 3120(Boston Scientific社製)

9 データ管理

9.1 データ保護

被験者は自身の医療データが記録されること、そしてそのデータは研究責任者に提供されることへの同意を書面で表明しなければならない。データは匿名化された後、研究責任者に郵送される。

被験者は(研究実施施設内外で)研究責任医師以外の医師による治療を受けた有害事象に関して、研究責任医師が他院にデータを照会することや匿名の写しを研究責任者に郵送されることに同意しなければならない。

9.2 文書化の範囲

本研究に関連するデータの記録に際しては、研究実施計画の要件に従い、CRFを使用しなければならない。文書化が必要となるのは、登録時、製品初期設定時、及び3, 9, 12, 15, 18, 21, 24ヵ月フォローアップ時である。

9.3 データ処理

送られてきたCRFのデータはすべて研究責任者がデータベースに記録する。

9.4 データの品質保証

研究分担医師または研究責任医師は、CRFに署名し、記載内容やデータに不備や間違いがないことを確認する。また、欠測値の追加や相反する記載の修正を依頼されることがある。

CRFの原本及びデータベースは研究責任者により研究終了後最低5年間保存される。

研究分担医師または研究責任医師は、本研究終了後、提出したCRFの写しと被験者の署名及び日付が記入された同意書の正本を臨床研究実施施設で10年保管する。

10 組織の条項

10.1 責任者

10.1.1 研究責任者(CCI)

〒470-1192 藤田保健衛生大学循環器内科

愛知県豊明市沓掛町田楽が窪1-98

渡邉英一

研究責任者の職務は以下のとおりである。

➤ 研究計画の作成

➤ 研究の遂行と進捗状況の管理

➤ リスク/ベネフィット比の継続的評価

➤ 必要に応じて、研究分担医師と協議の上で研究の途中終了を決定

➤ 研究結果の公表及び発表の調整

➤ 研究に関係のある医学的な質問について研究分担医師全員に助言を行う

➤ 有害事象報告

10.1.2 研究分担医師と研究責任医師

以下に職務を示す。

➤ 施設の倫理審査委員会の承認を得る

➤ 条件に適合する患者を選定する

➤ 研究計画に従って患者への説明を行い、書面で研究参加の同意を得る

➤ 使用する医療機器を安全かつ有効に使用する

➤ 研究計画を遵守する

➤ 記入済みのCRFを研究依頼者に提出する

➤ 有害事象を報告し、必要に応じて、参考資料を提出する

➤ 研究に関連するすべての文書や資料を機密扱いとする

10.1.3 心不全イベント判定委員会

心不全イベント判定委員会は、送られてくるすべての心不全イベント報告書及び心不全イベントの参考情報/資料(該当する場合)を定義に従って評価する。

名古屋市立大学 大手信之先生

名古屋第一赤十字病院 丹羽総子先生

10.2 倫理的及び法律的側面

本研究に参加を予定する患者全員に、患者への説明文書に基づいて予定される検査やベネフィット、リスクについて詳細に説明する。患者は、各書類に署名することによって、研究参加及び自身のデータの提供に同意する。

本研究は、研究実施施設の規定により施設内の承認審査が必要である。研究実施が承認された場合に本研究を開始することができる。

11 中止基準

以下に示す基準を満たす場合、被験者の臨床研究参加を中止する必要がある。

➢ 何らかの被験者側の理由により、正常に遠隔データ送信が行えない場合。

➢ 被験者の遠隔地への引っ越し、死亡、又は臨床研究参加の撤回。

以下に示す基準を満たす場合、本臨床研究は中断又は中止される。

➢ 研究を継続することにより、被験者が不合理なリスクにさらされる場合。

中止決定は研究責任者と研究分担医師の協議のうえ判断される。

12 論文化

主論文

大基準:研究責任者と研究分担医師を主論文著者とする

小基準:研究責任医師においては登録症例の多い順より全員を主論文著者とする。ただし、投稿誌の著者数規定により増減がありうる。

サブ解析

研究分担医師あるいは登録症例の多い研究責任医師は、主論文が採択されたのちに、サブ解析論文を発表できる権利を有する。詳細は研究責任者と研究分担医師により決定する。

13 参考文献

1. Rosamond W, Flegal K, Friday G et al. Heart Disease and Stroke Statistics-2007 Update: A Report From the American Heart Association Statistics Committee and Stroke Statistics Subcommittee. Circulation 2007;115;e69-e171

2. Swedberg K, Cleland J, Dargie H et al. Guidelines for the diagnosis and treatment of Chronic Heart Failure: executive summary (update 2005). The Task Force for the Diagnosis and Treatment of Chronic Heart Failure of the European Society of Cardiology. Eur Heart J 2005; 26; 1115-1140

3. Hoppe UC, Boehm M, Dietz R et al. Leitlinien zur Therapie der chronischen Herzinsuffizienz. Z Kardiol 2005;94:488-509

4. McMurray JJ, Stewart S. Heart Failure: Epidemiology, aetiology and prognosis of heart failure. Heart 2000;83:596-602

5. Tendera M. Epidemiology, treatment, and guidelines for the treatment of heart failure in Europe. Eur Heart J 2005; 7(Supplement J):J5-J9

6. Hunt SA, Abraham WT, Chin MH et al. ACC/AHA 2005 Guideline Update for the Diagnosis and Management of Chronic Heart Failure in the Adult – Summary Article. A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Writing Committee to Update the 2001 Guidelines for the Evaluation and Management of Heart Failure). Circulation 2005; 112:1825-1852.

7. Jessup M, Brozena S. Heart Failure. N Engl J Med 2003; 348: 2007-18.

8. Cleland JGF, Swedberg K, FollatHF et al. The EuroHeart Failure survey programme- a survey on the quality of care among patients with heart failure in Europe. Part 1: patient characteristics and diagnosis. Eur Heart J 2003; 24: 442-463

[1] CIBIS ß-Blocker (1999), CHARM Candesartan AT1-Antagonist (2004), Companion CRT-arm (2004), CARE HF CRT arm (2005), Madit II Control arm (2002), DAVID VVI-40 arm (2002), VAL-HEFT Valsartan AT1-Antagonist (2005)

[2] 被験者にみられるあらゆる好ましくない医療上のできごと。この定義が有害事象と臨床研究対象機器との因果関係を意味するものではない点に留意する。

ISO 14155-1参照。ヒトを対象とする医療機器の臨床研究-第1部:一般要求事項

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